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ディアッカの話を聞き終わった僕は、マリューさんの元へと向かう。


エルナを地球連合軍に帰したいとお願いをしに。


ディアッカから聞いた話は、正直よくわからなかった。コーディネーターと同等の力を手に入れられる薬物…その代償が大きく精神の破綻、そして最後は廃人になってしまうと。

しかし、その結果パイロットではなくMSの付属パーツとして扱われている。そしてその犠牲者がエルナの大切な人達という事だ。


その大切な人達の為にエルナは、必死に対抗できる薬を作っているらしい。まだ試作段階で精神を落ち着かせる程度の物らしいけど、それでも諦めたくないと話していたらしい。


そして捕まった身だから、報告するしないはキラに任せると言っていたと。ディアッカも言われたみたいだけど、ディアッカは俺も捕虜の身だからと報告を僕に任せてくれた。



「マリューさん。保護していた地球連合軍のパイロットが目を覚ましました」

「…そう。様子は?」

「まだ体が痛むみたいでしたけど大丈夫そうです」

「…話は出来そうかしら?」

「…いえ、今はまた寝ています。それで…お話があるですけど」

「なにかしら?」

「彼女を…エルナを地球連合に帰してあげたいんです。無理は承知ですけど…あの子は、帰さなくちゃならない子なんです」



ゆっくりとマリューさんに頭を下げる。無理を言ってるのは、重々わかっている。エルナは、オーブを攻めて来た僕達にとって敵だった相手だ。

これでエルナを帰したらまた戦場で会うかもしれない。いや、会うに違いない。そしてまた戦わなくちゃならない。

だけど、それでも…エルナは帰らなきゃならない、守らなくちゃならない人達がいるから。エルナにしか出来ない事だから。

もちろん、僕にだって守りたい人達がいる。だから…エルナが立ち塞がるなら…僕は戦うよ。

お互いに守りたい人達がいるから…。



「…理由を聞いてもいいかしら。あの子は、地球連合軍で…ブルーコスモスよ。また戦う事になるのはわかりきっている事でしょ?」

「それでも…助けたい。エルナがいるべき場所へ帰してあげたいんです」

「…あの子もこの戦争の犠牲者なのね。でも敵になった時にキラくんは彼女を撃てるの?」

「…はい。出来ればしたくないけど…僕にも守りたい人達がいるから」

「…わかったわ、キラくんを信じましょう」

「…ありがとうございます」

「けれど彼女は命に別状がないといっても重傷よ…このまま帰す事は出来ないわ。いつ帰すかは彼女の様子を見てから決めましょう」

「わかりました。じゃあ目を覚ましたら報告しに来ます」

「えぇ、お願いね」



そして僕は、もう一度マリューさんに頭を下げてからエルナの元へ向かった。




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