そしてあたしは、ティキの部屋に連れて来られたのだけど…特に変わったところはない様に見える。
ボーッと立っているとティキがクスクスと笑いながらあたしの手を引き、パソコンの前まで連れて来るとあたしに見ててと言うと手慣れた手付きでキーボードを叩くと画面には、あのファイルが開かれていた。
「エルナは、これを見たんだよね?管理が甘いのはさすがというかなんというか…」
「…うん。でもなんでパソコンがあるの?シャニ達の部屋にはなかったはずなのに」
「まぁ、なんて言うかオルガ達が来てから監視役として与えられただけなんだけどね」
「監視役?」
「なんて言うか、3人の様子を報告するように言われてんの。まぁ、全然報告してないんだけどね」
そしてティキは、自分の事をあたしに色々な事を教えてくれた。ティキは、シャニ達より先にここに連れて来られて…色々な薬を試されていた事とか、この実験に反対してた人がいた事とか…
そしてあたしに話し掛けながらティキが画面を指差した。
そこを見れば、γ−グリフェプタンについての事がズラリと並んでいた。試作品の欄も入れればかなりの物があった。
「これは研究者の人しか知らないファイルで、成分とか細かい事がわかるよ」
「なんで…ティキがそんなの知ってるの?」
「あ、やっと名前呼んでくれた。で、なんでだっけ?それは、俺が薬の調合に関わってるから…かな」
「どういう事?」
「俺ね、いつ死んでもおかしくない身体なんだ。延命治療薬がないと生きていけないの」
そしてティキの話はこうだ。
元々、身体が弱かったティキはずっと入院してたそうだ。だけど、治療を受けるのに膨大な額のお金が必要だった。だが、元から入院生活だったティキに親は見切りを付けたのかティキを置いて逃げ出し、そのままティキは軍に引き取られたんだとか…。
それで軍で延命治療薬を提供して貰いながら、自分でも延命治療薬の他に薬を作りたいと言い出したのがきっかけで軽くではあるが情報を貰えるみたいでこのデータファイルを見ることが出来るらしい。
「だから、ある程度なら薬には詳しいよ。まぁ、最近得た知識だから大した事はないけどね」
「…それをあたしに話して大丈夫なの?」
「別にアズラエルには止められてないからね。γ−グリフェプタンをオルガ達に投薬してる事も話すなとは言われてないし。それにエルナの部屋にパソコンがあるなら、いくらでも言い逃れ出来るから」
「ならいいんだけど…」
「心配してくれるんだ?でも俺はオルガ達程、厳しく管理されてないから大丈夫。それにある程度は信用されてるから」
というか、俺は劣化品扱いだから気にされてないよと悲しそうに笑うティキにあたしはなにも言えなかった。
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