物事付いた頃から、ただひたすらに生きる為に動いた。盗みもしたし、禁止されてる他の地区にも忍び込んだりもした。
"黒禍に会えば死ぬ"だなんて嘘だ。逃げれば死にはしないし、子供のあたしからすれば僅な隙間に隠れる事も出来た。
そんな黒禍とかくれんぼをしながら、日々を過ごしていた。もちろん、大人は日に日に黒禍に殺され死んでいき、また新しく他の地区を追い出された輩がここへとやって来ては、その繰り返しだ。
そんなある日、大量の黒禍が現れたとかで珍しく特殊部隊とやらが99番地区に来た。いつもならこんなところに黒禍が出たって放置なのに、珍しい事もあるんだなぁ〜なんて思ってた。
だけど、この辺の黒禍を殲滅してくれれば、多少なりと安全に動けるから有り難い。もちろん、すぐに黒禍は増えるだろうし、意味ないけど。
しかし、黒禍を殲滅しに行ったまま特殊部隊が帰って来なかったのだ。
最初は、すぐに殲滅して帰っただけかと思ったけど黒禍が普通にいる辺り、それも違った。
不思議に思ったあたしは、特殊部隊が殲滅へ向かった場所へと様子を見に行った。もちろん、見るだけのつもりだった。
だけど、それは叶わなかった。
そこには、噎せ返る程の血の臭いの中、無数の黒禍と特殊部隊の無惨な死体が転がっていたのだ。
もはや、血の海だった。
何度も黒禍に人が殺される場面は見て来たが、ここまで酷いのは見た事がなく思わず立ち尽くしてしまった。
そんなあたしを黒禍が見逃す訳がなく、数体の黒禍があたしへと向かって来た。
逃げようと走り出すが、それよりも早く黒禍があたしの前へと立ち塞がり逃げ場を無くした。
その時、あたしも遂に死ぬんだなぁ…なんて思ったけど、体は素直で生きたいという気持ちが先走り、その辺に転がっていた武器を拾うと黒禍へ突き立てていた。
そして、一瞬気が抜ける様な感覚に襲われつつも、まるで柔らかい果実にナイフを刺した様にあっさりと黒禍にナイフが突き刺さった。
そのナイフを勢いのまま引き抜くと、黒禍が弾ける様に消滅した。
その光景に頭が追い付かず、ナイフを落としそうになるがそんな暇もなく次々と黒禍が襲って来て、あたしはナイフを握り直した。
そして気が付いた時には、全ての黒禍はいなくなっていて…そこにはナイフを持ったあたしだけが立っていた。
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