そして連れて来られたのは、話でしか聞いた事がない様な大きな建物だった。
珍しくてキョロキョロと周りを見渡していると、長身の男に笑われたのですぐにやめた。
そして案内された部屋に着くとそこには、あたしと同じ年くらいの男の子が2人いた。
「はい、君達に新たな仲間が増えたよ〜。仲良くしてね。えーと、名前は…」
「・・・・・」
「えーと、なにちゃんかな?」
「まずは自分から名乗る事を覚えろ。俺は柘植だ」
「そっかそっか。僕は、齋藤至だよ。一応、ここでは偉い人って事だけど、気軽に至さんとでも呼んでね」
「・・・沙羅。鳴神沙羅」
「はい、わかりました。沙羅ちゃんね。君は、今日からこの東北支部の特殊部隊に入隊する事になりました」
・・・は?
確かに、何も聞かずに着いて来たあたしも悪いけど、いきなり特殊部隊に入隊ってどういう事だ?
しかも、あたしは特に訓練もなにもしてないただの子供だ。特殊部隊っていうのは、いっぱい訓練してなるものじゃないの?
そんな事を考えていると齋藤が"君は、黒禍を消滅させたよね?"とヘラりと笑った。
「はっ…このガキが?しかも女じゃねぇか」
「そういうお前もガキじゃん」
「あぁ?」
「こらこら、喧嘩しないの。こっちが平等院鳳凰くんでこっちが鬼十次郎くんね。2人も数日前に100番地区で僕がスカウトして来た子なんだよ〜」
「こいつ等は、黒禍をどっちが多く殺れるかを競ってたくらいには戦闘に慣れてるがな」
・・・100番地区。
噂でしか聞いた事ないけど、もはや人が住める様な場所じゃないって言われてるところだ。もちろん、あたしがいた99番地区も似たようなもんだけど…それでも100番地区よりはマシだと思う。
100番地区は、"寝たら死ぬ"なんて言われてる程の平野ばっかりなところだし。99番地区は、森が多いから…隠れられる場所が多いだけで黒禍の出現率とか日常的に人が死ぬのはそんな変わらないんだろうけど。
それに黒禍を殺った数を競ってたって…あたしなんか、今日初めて消滅させたくらいなのに。特殊部隊なんかが務まる訳がない。
「当分は、3人で一緒にチームを組んでもらうからね。人員不足でね、明日から頑張ってね!」
「沙羅。お前は、まずこっちだ」
「えっ…」
「お前に合う武器を探すだけだ。そのナイフが良いって言うなら構わねぇがな」
「そうそう!武器については、柘植ちゃんに聞いてね!じゃあ僕は、黒ベエに報告してくるから」
じゃあまたね〜と手を振る齋藤を無視して、柘植に着いていく。
なんか平等院と鬼が、物凄く嫌な顔をしてた気がするけど、知ったこっちゃない。
着いて来ちゃった以上は、指示には従う。
・・・お腹空いてるしね。
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