自分が全ての黒禍を消滅させた事実に未だに頭が追い付かず、手に持ったままのナイフを見つめるとうっすらと何かを纏っている事に気付いた。
原理はよくわからないし、本当にあたしがこの武器を使えているのかはわからないけど。
そんな事を思いながら、呆然とナイフを見つめていると不意に人の気配を感じて、バッと振り向きナイフを向けた。
「おやおや、随分と好戦的だねぇ。急に通信が途絶えたと思ったら」
「フンッ…全滅か。そんでこのガキが黒禍を殺ったわけか」
「だ、誰?」
「僕達は、特殊部隊の者ですよ。そこの子達の上官みたいなものです」
「お前、そのナイフが使えたみてぇだな」
「・・・・・」
「とりあえず、僕達に着いて来てくれるかい?君がいるべき場所は、ここじゃない」
急に現れた怪しい人物相手にすぐ警戒心を解く程、あたしもバカじゃない。
特殊部隊の者だと言うのなら、このナイフを返せと言われるに違いない。
これさえ持っていれば、黒禍から隠れる必要も逃げる事もしなくて済む。このまま逃げれば…
「僕が君をここから出してあげるよ。だから、信じて着いておいで?」
「胡散臭さ増したぞ」
「えぇ〜?黒ベエが居ればよかったのに。本当に悪い様にはしないから、ね?」
「・・・ご飯食べられる?」
「うん。お腹いっぱい食べさせてあげるよ」
「・・・いく」
正直、嘘かも知れないけど…お腹が空いてたし。ここから出してくれるって言うならと、怪しい男の言葉に頷いた。
ゆっくりとあたしに近付いて来る長身の男に警戒していると、ポンッとあたしの頭の上に手を置くとヘラりと笑った。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ〜。では、行きますよ〜」
「・・・・・」
「だから余計怪しいぞ」
「えぇ…?僕なりに警戒を解こうとしたんだけどなぁ〜」
「おら、行くぞ」
「うん」
「え、柘植ちゃんズルい」
「意味がわからんぞ」
怖い顔をしてる人は、なんとなく信頼出来そうな気がした。だけど、やっぱりまだ警戒心を解くまではいかず、少し離れて後ろを付いていった。
途中で長身の男が何度か話し掛けて来たけど、必要ない事ばっかりだったから無視した。
そんな中、怖い顔をしてる人はあたしがちゃんと着いて来てるかを確認する程度に振り向くだけだった。
やっぱり、こっちの人の方がまともな気がする。
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