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壁と若に挟まれて逃げ場がない。それに目の前の若は、ジッとあたしを見つめていて余計に逃げ出したくなる。

しかしそれを若が許してくれる訳もなくあたしが動くとバンッと壁に手を当てた。

こ、怖い…

なんであたしがこんな目に遭わなくちゃならないんだろう。あたしが何をしたって言うんだ。

訳もわからず、また涙が出てくる。



「…な、泣くなよ」

「若、キライっ…退いてよ」

「なら尚更退けないな」

「なんで意地悪ばっかりすんの…放っておいてって言ったじゃん」

「バカか…好きな奴を放ってなんかいられるか」



……あれ?なんかおかしいよ。
なんであたし、若に抱き締められてるんだろう。痛いくらい抱き締められて何故か余計に涙が溢れる。

……ズルいなぁ。

こんな事されたら拒めないじゃん。嫌いになれないじゃん。嘘だってわかってても嬉しいって思っちゃうじゃん。



「別にお前を傷付けたかった訳じゃない。ただお前の前だと…」

「…若は嘘つきだから信じない」

「・・・・・」

「もう許すから下手な嘘付かなくていいよ。だから離して…」



そうだ、若はきっとあたしが泣いたりしたから驚いただけなんだ。だから必死にこんな嘘までついて許してもらおうとしてるんだ。

なんでそこまで必死なのかは、わからないけど…多分、意地悪出来る相手があたししかいないからとかそんなところだろう。



「嘘じゃない。いくらなんでも嘘で好きだなんて言える程、クズになったつもりはない」

「…はい?」

「だからお前の事が好きだって言ってんだろ。何回言わせんだ、ふざけてるのか」

「え、いや…だから嘘でしょ?」

「嘘じゃないって言ってるだろ。いい加減にしないと口塞ぐぞ」



あれ、なんか告白されてるっぽいのになんでか脅されてるんだけど…あれ?

本当に若があたしを好き?

いや、有り得ない…今までそんな素振りなかったもん。

でも若の耳が少しだけ赤く染まっているのに気付いて、目を見開く。しかもよく見たらさっきまであたしの事見てたのに今は、めちゃくちゃ目反らしてる。

あぁ…もうなんだかなぁ…



「ねぇ若、耳赤いよ」

「…うるさい」

「ハハッ…なんか泣いてたのがバカみたい」

「お前は元からバカだろ」

「えへへっ…あたしも若が好きだよ」

「…知ってる」



なんか若が可愛い。

照れてるのかまたあたしを抱き締めると何故かバカを連呼された。

でも元はと言えば若が意地悪ばっかりするのがいけないんだもん。

とりあえず、今までのお返しを込めて若の頬っぺにちゅーしたら若が面白いくらい顔を赤くしたのでからかったら何故か口を塞がれた。



(俺をからかうとはいい度胸だ)
(ちょ…若、ここ廊下っ)
(知らんな。お前が静かにしてればいい話だ)
(な、ちょ…わ、若っ…)
(なんだ嫌なのか?)
(そ、そうじゃないけど…)
(なら黙ってろ)
(あっ…んっんーっ…)
(お前キス下手くそだな)
(う、うるさいよ…)
(まぁ、問題ない。俺が教えてやる)
(やだ、若の顔が怖い…)

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