どうしてこんな事になったんだろう。
暗闇に佇む、見慣れた校舎を見上げながら拳をギュッと握りながらそう思った。
◇◆◇◆◇
今日は、珍しく早苗が風邪を引いて学校を休んでて…いつも以上にマネージャー業に追われていた。
そんな時だった、職員室に土日の部活の時間引き延ばしの話をしてコートに戻ろうと下駄箱を出ようとしたら…いつの間にか気味の悪い雲が一面に広がっていて思わず足を止めた。
その瞬間、何かがあたしの体をすり抜けた様な感覚がして膝から崩れ落ちる様にその場に倒れてしまった。
そこであたしの意識はプツリと途切れ、気が付いたら校門に入ってすぐの場所に寝転んでいて…ゆっくりと起き上がると服装がジャージだったはずなのに、いつの間にか制服になっていた。
そして周りにはさっきのあたしと同じ様に見慣れた人達が倒れていて、ゆっくりと起き上がると周りをキョロキョロと見渡してあたしを見るなり目を見開いた。
「璃亜、お前さんなんでこんなところにいるんじゃ」
「いや、知らん」
「とりあえず、他の連中も起こすかのぅ。ほれ、璃亜も手伝いんしゃい」
仁王は、あたしと違ってかなり冷静な様でゆっくりと立ち上がると他のメンバーを揺すり起こし始めた。
しかし、あたしはそんな様子を見つめながら下駄箱での出来事を思い出していた。
…おかしくない?
まだあの時は、他の部も部活をやっていて騒がしかったのに…今は驚く程静かで、風も全く吹いていないのにヤケに寒く感じる。
それに…あの時、下駄箱で聞こえた声…なんだったんだろう。
"御主のキヲクは貰った"
確かに、そう聞こえた。
「これは、どういう状況?なんか色々と不可解な事になってるけど」
「うむ、まずまだ部活中だったはずの我々が制服になっているのはおかしい」
「そ、それに俺達はコートにいたはずッス!!」
「とりあえず、部室に行かね?普通に荷物とか置きっぱだろぃ?」
「うむ、まだ状況がよくわからないがっ…」
――――――♪
「"只今、黒屍鬼が校門前に現れました。付近にいる方は気を付けて下さい"」
不意に聞こえた機械的な放送に驚いているとあたしの目の前に黒い獣の様なこの世も者とは思えない者が現れた。
しかもあたしは、最初にいた場所から動いてなかったせいで化物が目と鼻の先にいた。
そんな事を考えつつ、本能が逃げなきゃと警報を鳴らし、走り出そうと後ろを向いた瞬間…あたしの足が地を離れた。