相変わらず、冷静な2人は急に黙ったあたしを心配するかの様に小さな声で大丈夫ですか?とあたしの顔を覗き込んだ。
「ん、大丈夫。ごめん…ちょっとテンパってた」
「まぁ、璃亜さんの事ですしね。自分のせいだとか色々下らない事を考えてたんでしょう?」
「く、下らなくないよ!」
「それより、なんか他に情報あらへんの?その銀鬼って奴から色々聞いたんやろ?」
「え、あ…うん。じゃ、じゃあ…聞いた事、全部話すけど…無茶しないでね」
「ふっ、珍しくしおらしいじゃないですか。まぁ、出来る限り努力はしますよ」
このキヲク探しに参加させられてる時点で無茶もくそもないんだけど、キヲク探しをやめないって言ったこの2人は特に無茶しそうだし。
でもあたししか知らない事だって銀鬼が言ってたから、聞いた事は全部話さなきゃダメだ。そもそも、キヲク探しのルールすらまともに説明されてないみたいだし。まぁ、それはあたしも同じだったんだけど。
◆◇◆◇◆
「・・・って、感じ」
「鬼畜過ぎやろ」
「思ったより絶望的ですね」
「だから、やっぱり」
「せやけど、諦める気なんてあらへんけどな」
「そもそも簡単にキヲク探しを終えられるとは思ってなかったしな。でも、ルールは理解しました」
キヲク探しのルールは、簡単に言えばエリア内に散らばっているあたしのキヲクを探すというもの。
そしてそのキヲクはガラス玉の中に入っていて、見付けただけじゃなんの意味もなく、そのキヲクのガラス玉(以後キヲク玉)を中庭にあるという、キヲクの樹に叩き付けて割らないとならない。
しかもキヲク玉を持ったままキヲク探しが終わった場合、キヲク玉は消滅し新たな場所へ移動する。
「んで、道具についてやけっ…」
「え?んんっ…!」
「シッ…」
もちろん、ずっと小さな声で話していたし…警戒もしてた。だけど、こいつ等にそんな常識は通用しない。
あたしの口を抑えているわかちゃんと扉の外を警戒する様に凝視しているひーちゃんは、真っ直ぐとこちらに近付いてくる足音に耳を澄ませていた。
・・・この重量感。
あの、あたしを殺した黒い鬼だ。
――――――♪
「"只今、黒屍鬼が職員棟1階に現れました。付近にいる方は気を付けて下さい"」
この放送を聞いたのは2度目だ。
そしてこの保健室のドアを破壊してあたし達を見下す、この黒い鬼を見るのも2度目だった。
※探索組(丸井・桑原・切原)
(今日は、職員棟か…)
(…ここから遠いから安心ッスよね?)
(他の鬼がいるんだから安心出来ねぇだろぃ)
(それに何も見付からねぇしな…)
(つーか、足音ばっかで動けねぇよ)
(…青いのと赤いのばっかりッスね)
(マジで何体いんだよ…クソ)
(でも耳は悪いみたいだな)
(あいつ等は視覚タイプなんだろ)
(聴覚タイプがいたらヤバいッスよね)
(普通にいるだろ、どうせ)
(・・・移動したぞ)
(じゃ、隣に教室行くぞ)
(ウ、ウィッス…)