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05 (4/5)
そして暫くしてゆっくりと璃亜さんが顔を上げた。
「…落ち着きましたか?」
「うん、もう大丈夫…ごめんね。裕次郎も…」
「謝るなっしー。わんは、やーを守るのが仕事なんさー」
「とりあえず、移動しましょう。…璃亜さん、歩けますか?」
「うん、大丈夫」
そう言いながらゆっくりとわかちゃんから離れて立ち上がるとすぐにわかちゃんも立ち上がり、あたしに羽織らせていたジャージのファスナーを上げてくれた。
あぁ…そっか。
あたし、服切られたんだっけ…。
そして険しい顔をして地図の確認をしようとするわかちゃんにまたしても罪悪感が襲った。
「今から服の調達は難しいので、俺のジャージですいませんが我慢して下さい」
「ううん、ありがとう」
「そんな顔しないで下さい。別に俺は気にしてないんで」
「日吉、遠回りしつつ小屋目指すって事でいいん?」
「えぇ、俺が先導するんで後ろお願いします」
「おん、任せれ」
そしてあたしを挟むようにしてわかちゃんが前に裕次郎が後ろを歩き、氷帝の集合場所だという小屋を目指して歩き出した。
そしてあたしは、小屋に無事に着くまで余計な事を考えないように必死に足を動かした。
―――
――――
―――――
時間を遡り、時刻は10時。
東の海岸よりの位置。
橘杏は、そこで身を潜めていた。しかし、そこへ杏を追って来た葵剣太郎が現れる。
杏は、必死に葵がいなくなる事を祈りながら息を殺した。葵は、
クイーン
狙いだったのだ。
最初は、一緒に逃げましょうと優しく笑ってくれていた葵が急に襲ってきた為、杏は必死に逃げてここまで来たのだ。
「あー見付けましたよ!大丈夫ですよ!痛い事はしません」
「…っ!!」
「撃たれたくなかったら大人しくして下さい!姫の印を見付けるだけですから」
鬼から奪った銃を構えた葵は、ニコニコと笑みを浮かべながら杏にジリジリと歩み寄って来る。
それが杏には恐怖でしかなく、ただただ後ずさる事しか出来ない。杏は、鬼に追い詰められた時の事を思い出していた。
急に訳のわからない説明をされて目が覚めたら森の中にいた。そして運悪くすぐに鬼と遭遇してしまい、鬼に襲われたのだ。
杏は、その時の鬼と葵が重なって見えた。
必死に逃げてどうにか逃げ切る事が出来た。そして葵と会い、味方だと思っていた葵とに襲われたのだ。
最初から自分に味方はいないんだと…みんな自分の敵なんだと、あの変な人の言った通りなんだと杏は、ギュッと拳を握った。
そしてそんな杏にお構い無しな葵は、遂に杏を追い詰めるとニコニコと笑いながら腕を伸ばし杏の服に手を掛けた。
お兄ちゃん…アキラくん…みんな。
その瞬間、杏の体の震えが収まるとポケットに入れてあった小型ナイフ取り出し、杏の服を脱がしている葵に向かって突き立てた。
「…私は、死なない!」
「ぐあっ…な、なっ…」
「…うっ…ご、ごめんなさいっ!」
「っ…く、くっそぉ…!」
「…っ!?うっ、あぁっ…!」
急にナイフを刺された葵は、痛む腹部を押さえながらも逃げて行く杏に向かって銃を放った。
そしてその銃弾は、杏の左肩に当たるが杏は必死に痛みを我慢してその場から逃げ出した。
四天宝寺:民家
(…なぁ、白石?)
(なんや、金ちゃん)
(ワイが鬼倒してくる)
(な、なに言い出すねん!)
(せやけど、鬼減らさんかったらみんな死ぬんやろ?だったらワイが全員倒したる!)
(…無理せんでええんよ。それに今は、みんなが帰って来るのを待つんや)
(…ワイ、みんなが死ぬの嫌や…だから)
(…わかっとるよ。だけどまだ動くのは早い)
※支給武器、所持武器、生存者等
ネタバレがある可能性があるので
閲覧にご注意下さい。→
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