…なに、これ…。
この赤黒い塊が一体なんなのかわからないけど、さっきから鼻を刺すような刺激臭と鉄の臭いはこの赤黒い塊からしていて…しかもその臭いはズルズルとあたしに近付いて来てるせいかだんだんと強くなって来ている。
しかもその赤黒い塊にある無数の目があたしをジーっと見つめていて、目が離せないどころか体が動かない。
「璃亜先輩っ!!」
「「璃亜さんっ!!」」
「っ!」
赤也達の声にあたしに手を伸ばす様に近付いて来た赤黒い塊からバッと離れる。
あ、危ない危ない…。
ボーッとしてる場合じゃない。でも恐怖からなのか体が思う様に動かない。
幸い、この赤黒い塊は動きが遅いみたいだけど…どうしたらいいのかわからない。どうにもこうにもこの赤黒い塊はあたしに付いて来るみたいだし。
…赤也達に色々聞きたいのは山々だけど、この赤黒い塊が付いて来るんじゃ赤也達の方に行けないし。
そんな事を考えながらジリジリと赤黒い塊と距離を保ちつつ後退りをしていると凄い勢いで何故か3人が走って来て目を見開く。
「あいつが璃亜さん狙いっちゅーなら簡単な話や。足も遅いみたいやし」
「逃げるが勝ちだろ!」
「えっ…うわっ!」
「璃亜さん、ジッとしてて下さい。あいつを撒きます」
「切原が先頭走れ。しゃーなし、俺が最後尾走ったるから」
「最初の部屋に戻る。切原、場所はわかるな?」
「お、おう!」
なにがなんだかわからないけどあたしがわかちゃんに担がれてるのは、わかった。
そして舌を噛むからと大人しくしてて下さいと言う言葉に素直にコクりと頷くと3人が走り出して、後ろからズルズルとあの引き摺るような音が聞こえて来た。
だけど、やっぱり動きが遅いらしくその音はどんどんと遠ざかっていった。
「っ!す、すとっぷ!!」
「なんだ切はっ…チッ、またあいつか」
「勘弁してや。あいつ、脚めっちゃ速いヤツやん」
「ど、どうする?遠回りするか?」
「璃亜さんがいる事を忘れるな。あいつの狙いがわからない以上、対処が難しい。それに化物達がみんな璃亜さん狙いの場合、無闇に歩き回りたくない」
「ハァ…なら囮行こか?それなりに体力あるし」
「いや、俺が行く。財前は璃亜さんを頼む」
相変わらず、あたしには何がなんだかわからないけど…わかちゃんがゆっくりとあたしを下ろすと何も見ずに財前と切原に付いて行って下さいとあたしの頭を撫でた。
そしてひーちゃんがちゃんと戻って来いやと言うと、当たり前の事を言うなとわかちゃんが走って行った。
その瞬間、耳を刺すような悲鳴の様な鳴き声?がしてそっちを見ようとしたらひーちゃんに見なくてええと阻止された。
そして赤也が行くッス!と走り出してあたしはひーちゃんに手を引かれながら走った。