◇◆◇◆◇
出発地点から然程遠くない位置に青学のメンバーは、集まっていた。待っている内に携帯の登録済みだ。
しかし、不二・桃城・越前が未だに来ず、手塚はこれ以上は危険だと判断し移動を開始した。
「手塚っ…もう少し待とう!」
「いや、ダメだ。さっきより銃声が近くなっている。ここで襲撃されたらバラバラになってしまう」
「とりあえず、落ち着いて話せそうな場所を探そう。どうやら、隠れ家にする場所はいくらでもあるみたいだからね」
「竜崎さんと小坂田さん、璃亜は無事かな…」
「…急ぐぞ。油断せずに行こう」
そんな冷静に見える手塚の拳が強く握られているのに気付いた乾と海堂は、酷く胸が締め付けられた。手塚も本当は、不二や桃城、越前を待ちたかったんだろう。
だが、そんな事をすればこれだけの人数がまとまっていればただの的になってしまう。
頭では、わかっているが鳴り止まない銃声のせいで余計に不二達の顔が見たくなる。
それでも今は、安全なところへ移動するしかなかった。
―――
――――
―――――
*****
あたしは、こんなところで死ねない。もし、死ぬなら早苗を助けて死ぬ。
それに、みんなを殺そうとしてる鬼なんて…あたしが殺してやる。
右手に持った小型ナイフを握り直し、あたしに全く気付いていない鬼へ素早く背後から近寄り、首元にナイフを力一杯突き立てた。
しかし、今までに感じた事のない嫌な感触がして咄嗟にナイフを引き抜いて後ろへ飛び退いた。
その瞬間、鬼の首元から噴水の様に血が噴き出し、ゆっくりと地面へ倒れた。
・・・っ!
カタカタと震える自分の腕を制止しながら、息絶えている鬼の手から銃を回収してその場を去った。
あ、あたしは…間違ってないっ!
だからっ、落ち着け…大丈夫、あれは敵だから…。
しかし、強烈な血の臭いが鼻から離れず思わずその場に膝をついて口を押さえる。
…うっ…吐きそう。
その時、背後から微かに物音が聞こえ、急いで鬼から奪った拳銃を構えて振り返る。
「璃亜…ちゃん?」
「え…あっ…ジ、ジローちゃん?」
振り返るとそこには、目を見開いて驚いているジローちゃんがいた。
「…っ璃亜ちゃん!」
「なっ…うわっ!」
「…璃亜ちゃん大丈夫?怪我してない?よかった…ホントによかったCー…!」
そしてジローちゃんは、拳銃を構えたままだったあたしになんの躊躇いもなく飛び付いて来た。