場所は、最も危険な中心部。
黒羽と天根は、後ろから追い掛けてくる鬼から逃げていた。
合流をする場所は、とっくに過ぎている。しかしこの鬼を連れて行く訳にはいかずにただただ逃げていた。
「クソッ!タビデ、俺がこいつを撃つからお前は先走れ!」
「…っでも、俺!」
「逃げ切れればいいんだよっ!別にあいつを殺すだなんて考えてねぇ!」
「お、おう!」
「よし!じゃあ撃つぞ。怯んだ隙に撒くんだ」
「わ、わかった!」
黒羽の支給武器は、サプレッサー付きのH&KMARK23だ。
そして追い掛けてくる鬼に適当に発砲する。もちろん、走りながらなので照準が安定せず鬼には当たらなかった。
しかし、鬼が一瞬怯んだ隙を2人は見逃さずにすぐにその場から去った。
―――
――――
―――――
そしてここは、北側にある街中である。食料や衣服には困らないみたいだが、どう考えても見付かりやすい場所だ。
そんなところを歩いているのは、聖ルドルフの観月と赤澤だ。観月の提案で早めに食料などを確保する為に合流場所が北側の街中になっていたのだ。
しかし、観月の予想が当たったのかこの辺りでは銃声の音がほぼほぼ聞こえない。
つまり、今はとりあえず安全なんだろう。
「…赤澤くん、後ろの警戒を怠らないで下さいね」
「わかってる。なぁ、観月…後で金田のところに…」
「…わかっています。僕だってそこまで非道ではありません。きちんと弔ってあげなくてはなりません」
「…あぁ」
「まずは、合流してからです」
モニターに映されていた金田は、後ろからなにかに斬られた様に背中がパックリと裂かれていた。
血溜まりにうつ伏せで倒れていた金田の顔は、確認出来なかったが…きっと怖かっただろう。
赤澤は、ゆっくりと目を瞑り金田との仇を取ると強く誓った。
―――
――――
―――――
出発地点から少し東の位置。
そこには、不動峰の面々がいた。橘は、携帯の登録をしたあと…今いる後輩達を強く抱き締めてからゆっくりと慎重に進み出す。
「橘さんっ…杏ちゃんや璃亜さん達は?」
「すぐに探しに行きたいのは山々だが、まずは…安全な場所に移動する。内村や森の捜索もしなくちゃだからな…」
「…橘さん、走って下さい。後ろから銃声が近付いてる…俺が武器構えてるんで」
「し、深司!?お前っ…なんだよ、それっ…」
「…俺の支給武器。結構当たりだったみたい…いいから早くアキラも走りなよ」
伊武の支給武器は、M4カービンだった。
伊武は、それを構えながら背後に気を配り最後尾を走った。