携帯をゆっくりと下ろすと参謀がすまなそうな顔をして、俺を見た。
…俺は、自分がナイトという事を知っていた。ここに向かいながら、軽く荷物を確認したからじゃ。
しかし、それを誰かに言うつもりはなかった。キングが俺がナイトだと把握しているのはわかっとったが…まさか、キングが参謀とは思わなかったぜよ。
「…これでも、言おうか迷ったんだぞ。しかしお前は、誰にも自分がナイトだと言わないだろうと思ってな」
「…それは参謀も同じじゃろ?みんなに言うつもりなら、わざわざこんな回りくどい事せんじゃろ」
「…そうだな。俺は、怖いんだ。鬼に襲われいた時、室町に助けられたと言っただろう?正直、俺は運がよかった…そこに現れたのがが裏切り者でアサシンだったら俺は今頃どうなっていたかわからない」
ギュッと左肩を掴む参謀の顔が歪む。
そして参謀は、悲しそうに笑うと頭を抱える様にして額に手を付いた。
あぁ…参謀は、俺以上に怖いんじゃな。頭の良い、回転も速い…故に最悪なシナリオを想像しとるんじゃろう。
「精市達を…仲間を信じたいのに信じられない自分が嫌になる…」
「…参謀、俺も同じじゃき。正直、自分がナイトってわかって信じられるのは璃亜達しかおらんと思っとったよ」
「・・・・・」
「それに状況が状況じゃからな…そう思うのは当たり前じゃ。でも今は、俺がいるぜよ。俺は、ナイトで参謀はキングじゃろ?」
「…そう、だな」
俺も参謀と同じじゃ。
信じたいと信じられるは違う。
じゃが、俺がナイトで参謀がキング…それだけで俺は、参謀を信じる事が出来る。
じゃが、配役を持っているからこそ、他の配役持ちがいる事がリアルで…近くにアサシンがいたらと…。
立海の中にアサシンがいるかもしれないと考えてしまう。
「…仁王は、立海にアサシンがいると思うか?」
「…いないといいと思っとるよ」
「…そうだな。すまない、下らない事を聞いた」
「ククッ、しおらしい参謀もなかなかいいもんじゃな」
「ふっ、俺にだってそういう部分はあるさ」
やっといつもの参謀らしくなったのう。
じゃが、正直俺も少しだけ気が楽になった。
そしてそんな会話をしながら探知機を見ていると黄色い点がこちらに向かってくるを確認した。