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俺は、リュックを手に取りゆっくりと廃校を出た。そして、この知らない土地に足を踏み入れて、やっとこれが現実なのだと理解した。
聞き慣れない銃声と微かに漂う鉄の臭い。
自分で言うのもおかしいが、俺は頭が良い方だ。正直、この絶望的なゲームの勝率を考えたらほぼ0に近いだろう。
しかし、精市は全員で生きて帰ると言った。それがどんなに辛くても、諦めなければきっと…とまるで願うかの様に俺等に話した精市を思い出す。
チラリと後ろを振り返り、自分が出て来たであろう場所を確認する。微かに銃声が聞こえてくる。つまり、廃校の中にも鬼が既にいるのだろう。
それにしても…次に誰が来るのかはわからないな。約5分間隔で名前を呼ばれていたので、外に出るつもりなら後2分弱で誰かがここへ来るだろう。
他のルートで出て来る可能性もあるが…、しかしそれが立海の誰かとは限らない故に待つのは、得策ではない。
俺は耳を澄まし、銃声から遠ざかる様にして廃校から離れた。そして精市に言われた集合場所へと向かう前に自分の荷物を確認する。
小屋に着いてから確認するのが安全面では、安心だが…小屋に着くまでになにもないとも限らない。
周囲を警戒しつつ、軽く荷物を確認した。俺の武器は、探知機らしい。黄色く点滅しているのが自分で少し離れたところに赤い点と黄色い点が激しく動き回っている。
赤い点が鬼とすると俺と同じ黄色い点は、学生という事か。
先にスタートした精市、丸井、赤也にしてはスタート地点に近すぎる…この3人ではないなら足を運ぶ理由は今はない。
…早苗は、無事なんだろうか。
そして再度、探知機で鬼の位置を確認してから続いて俺は、携帯を手に取った。
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「…仁王、少し話がある」
「…なんじゃ?」
ずっと黙ったまま探知機を見つめていた参謀がゆっくりと顔を上げた。
その表情は、まるで何かを決意した様な顔で少しだけ顔が強張った。
「お前は、ナイトだろう?」
「…いきなり、何言い出すんじゃ?」
「…ふっ、どうやら俺が例のキングとやらでな。だから、お前がナイトなのを知っている」
そう言いながら、ゆっくりとリュックから携帯を取り出すと俺に画面を見せた。
そこには、キングについての軽い説明とナイトの名前が記入されていた。