*****
気が付いたら放送室にいて、そこには銀色の髪をした人間にはない角が額にある小さな少女がいた。
その子は、自分の事を記憶を食う鬼だと言った。そして、あたしの記憶を奪い食らおうとしていると悪戯っ子の様な笑顔で語った。
最初は、意味がわからなくて混乱してたけど…あたしの胸を腕で突き殺した黒い化け物を見せられて夢じゃないんだと確信した。
その鬼は銀鬼と名乗り、色々とあたしに教えてくれた。
だけど、これは聞いてない。
「うわ、ホンマに璃亜さんおるし」
「立海の人達は、いないみたいだがな」
なんで、ひーちゃんとわかちゃんがいるんだ。前回のキヲク探しは、立海のメンバーしかいなかったはず。
だから、立海のみんながキヲク探しをリタイア…辞める方法は教えて貰った。それを誰か1人に伝える事が出来れば…みんなをこんな悪夢から救えると思ったから。
なのに…なんでこの2人がいるの?キヲク探しをしているのは、あたしと立海メンバーだけだったはずなのに。
「な、なんでっ…」
「とりあえず、落ち着いて話がしたいんで…移動しましょう」
「せやな。化け物に見付かったらすぐ死ぬんやろ?」
「ま、待って…なんで2人が」
「その説明をするんで、安全そうな場所に移動します。ここだと見晴らしが良くて、鬼にも見付かり易いですし」
「っ、わかった…」
テンパるあたしをよそに何故か冷静な2人に更に頭が付いていかない。どうして、この2人はこの場にいる事になんの疑問も恐怖も持ってないの?
普通ならこの状態に混乱してるはずだ。なのにこの2人は、まるでこうなる事を知っていたかの様に呆然と立ち尽くすあたしの手を引いた。
―――
――――
―――――
そして、周囲を警戒するわかちゃんとひーちゃんに手を引かれて着いたのは保健室だった。
「あー、なるほどなぁ。確かに、保健室なら他んところより安全そうやな」
「保健室なら外にも逃げられるし、それなりに役に立つ物もあるからな」
「で、璃亜さんに説明するんやっけ?ちゅーか、何を説明するんかわからんけど」
「俺等は、璃亜さんや立海の方達がキヲク探しをさせられている事を知ってます。もちろん、詳しい事はわかりませんけど」
「でもっ…キヲク探しをしてたのは、立海のメンバーだけで…」
そしてわかちゃんから話を聞いたあたしは、ギュッと拳を握った。
あたしを心配した赤也と精市が…わかちゃんとひーちゃんにキヲク探しの事を話した。だから、わかちゃんとひーちゃんもキヲク探しをする事になった。
そんなの聞いてないよ。
立海のメンバー以外がキヲク探しをさせられるなんて…