えっと、確かこの辺だった気がっ…
さすがに何度も来る様な場所じゃなくて、僅かな記憶を頼りにふらふらと歩いて来たんだけど、どうやら当たりだったらしい。
「鬼結さん!」
池の傍らの大木に寄り掛かる様に腰を下ろしていた、鬼結さんに思わず駆け寄る。
俺の声にゆっくりと鬼結さんがこっちを振り向き、少しだけ驚いた様な顔をすると気まずそうに笑った。
「ははっ、見付かっちゃったかぁ」
「そりゃあ、鬼結さんにいるのは水場って教えて貰ったッスからね」
「確かにねぇ。でも、まさか見付かるとは思わなかったよ。それで、わざわざどうしたの?」
「いや、なんつーか…鬼結さんが俺を避けてるみたいだったんで気になったっていうか…」
「左近が気味悪がるかなって思って気を利かせたつもりだったんだけど」
「そ、そんな事思わないッスよ!そりゃあ…かなり驚きはしたッスけど」
やっぱり、鬼結さんは俺を避けていたらしい。
そりゃあ、確かに驚きはしたけど…別に鬼結さんが気味悪いとかそういうんじゃない。
むしろ、ずっと鬼結さんの事を知りたかったし?ちょっと嬉しいっつーか。まぁ、鬼結さんが鬼っつーか…血を吸うってだけしかわからねぇけど。
それに、三成様がいいなら俺が文句言える立場じゃねぇし。
「俺は、三成様が信じてる鬼結さんを信じてますし。鬼とかよくわかんねぇけど…鬼結さんは、鬼結さんっつーか」
「左近って、結構馬鹿だよね」
「えっ!?」
「馬鹿は、三成だけでよかったんだけどなぁ。でも、まぁ…ありがとう」
「えっ?いや…どういう事ッスか!?」
少し眉を下げて困った様に笑う鬼結さんに更に意味がわからず、思わず声が大きくなる。
そんな俺に何故か、鬼結さんは"秘密〜"なんて言いながら、ゆっくりと立ち上がると真っ白なゆらゆらと装束が揺れた。
なんつーか、鬼って感じじゃないんだよな…この人。確かに、たまに言い様のない怖さを感じる時はあるんだけど…なんか違うっつーか。
・・・うーん。
「さて…左近に見付かっちゃった事だし、そろそろ行こうかな」
「城に戻るんスか?」
「ううん。仕事」
「仕事…ッスか」
「こう見えて、あたし結構忙しいんだよ?みーんな、あたしを酷使するからね」
「あんま無理しないで下さいね」
「・・・。はは、ありがとう。話し相手が欲しいなら、余分に分身置いてくけどいる?」
「いや、大丈夫ッス。なんかあったら困るし、温存しといて下さい!」
「そう。じゃあ、行って来るよ」
そう言うと、鬼結さんは薄く笑うと風の様に消えた。
やっぱり、三成様も言ってたし…鬼結さんって忙しいんだな。いつも城に分身置いてるのって、やっぱり…任務で城を離れてるからだろうし。
なんて思いながら、鬼結さんが腰掛けていた場所に寝転んで、空を見上げた。
鬼…かぁ。
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