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鬼結と出会ったのは、豊臣に仕えて間もない頃だった。戦を終えて、城へ帰還する途中…いきなり現れたのが鬼結だった。
「君、弱いね〜。そんなんじゃあ、すぐに死んじゃうね」
「なっ…貴様っ!」
「ははっ、遅い遅い。そんな君にとてもいい事を教えてあげるよ」
「貴様の様な得体の知れない者と交わす言葉などない!」
「ふーん。でも、今の君じゃあ、守れないよ?君が命より大事にしてる人を」
「っ!貴様ぁぁ!!」
軽々しく私の攻撃を避けながら、不快な言葉を紡ぐ女に苛立ちを抑えきれなかった。
というのも、こいつが言っている事は正しい。
此度の戦で私は、ほとんど役に立つ事が出来なかった。それどころか、私を庇った為に刑部に怪我を負わせてしまった。
そんな事もあり、私はこいつの言葉に過剰に反応してしまい、気が付いたら刀を抜いていた。
だが、そんな私を嘲笑うかの様に簡単に私の攻撃を避けるとそのまま私の刀を蹴り飛ばし、頭を掴み地面へと叩き付けた。
「ほら、死んだ」
「ぐっ…き、さまぁっ…!!」
「あ、そこの君も動かないでね。間違って殺しちゃうから」
「っ、刑部!!」
「ふふっ…どう、あたしと契約しない?そうしたら、守ってあげるよ?君の大事にしてる人を」
「な、なにをっ…!!」
にやにやと笑いながらも力を全く緩めないこいつは、チラリと私ではなく刑部を見つめた。
そして、仕方ないなぁ…あの人を殺せばわかってくれるかな?と真っ赤な瞳でニヤリと笑った。
溢れ出るこいつの殺気に思わず、身が震えた。しかし、それが刑部に向いているとわかった私は、必死にこちらを向かせる為に声を張り上げた。
「き、貴様の狙いは私だろう!」
「え、あぁ…まぁそうだね。でもあんた、全然話を聞いてくれないし?」
「・・ぬしは、何用で参った?」
「へぇ、あんたの方が話は通じそうだね。まぁ、さっきから言ってる通りあたしと契約して欲しいなぁって」
「では、その契約とやらはどの様な内容か教えて貰えぬか」
こいつの凄まじい殺気に当てられながらも、冷静に刑部はゆっくりと言葉を紡いだ。
そしてその態度に気を良くしたのか、そいつは私の頭を掴んだままケラケラと笑うと"一度しか言わないからよく聞きなよ"と言うと、とんでもない事を話し出したのだった。
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