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刑部さんに言われた通り井戸近くの部屋に着いて、息を殺しつつ…微かに空いた障子の穴から中を覗いた。
・・・これは見ちゃヤバいやつっしょ。
中にいたのは、三成様と…まさかの鬼結さんだった。正直、それだけなら全然普通っつーか…別に気にしないんだけどよ。
・・・あの鬼結さんが三成様に抱き付いてるんだよ。しかも、なんか三成様はされるがままって感じで…鬼結さんが一方的に抱き付いてるっつーか。
でも三成様の首筋に顔を埋めてるのは、どう見ても鬼結さんだ。
「くっ…まだか!」
「…ん、っ…まだ」
「っ、…早くしろ」
そしてその光景に何故か、ゾクリとした。
その瞬間、三成様の首筋に顔を埋めていた鬼結さんがゆっくりと顔を上げた。
だけど、伏せ目がちの鬼結さんに違和感を感じて目を凝らすと、鬼結さんの口元には血が滲んでいた。
そして三成様の首筋にもじんわりと血が滲んでいるのが見えて、鬼結さんが何をしていたのかがわかり思わずその場を離れた。
な、なんだよ…あれ!
それにいつもは、金色の鬼結さんの瞳が血の様に真っ赤に染まってたし。
・・・っ、意味わかんねぇよ!
結局、そのまま逃げる様に自分の部屋に戻って…あの部屋での2人の姿を思い出して頭を抱えた。
あぁ…クソッ!興味本意で見るんじゃなかった。あの刑部さんが言葉…そういう意味だったのかよ。
"何を思うかは知らぬがな"
何って…もうただただ意味がわかんねぇよ。だって…鬼結さんが三成様の血を吸ってた?いや、舐めてた?…よくわかんねぇけど、そんな感じだった。
つまり、三成様が血塗れだったのは鬼結さんに血を吸われてたから?いや、でも…三成様は自分の血じゃないって言ってたし。
でも三成様も俺と同じで嘘とかイカサマとか嫌いだし。ていうか、三成様は嘘下手だし。
じゃあ…あの血は、なんだったんだ。三成様の血じゃないなら誰の血だってんだ。
「ふふっ…やだなぁ。覗き見なんて」
「っ!!」
「気配を消すなら、部屋まで最後まできっちり消さなきゃ」
「鬼結さ、んっ…」
「・・そんな怯えた顔しなくてもいいのに。あたしの部屋を教えたのだって刑部でしょ?」
「なっ…」
「それに気付かなかったあたしも悪いからね。それで、まぁ…見ちゃったもんは仕方ないし、詳しくは三成か刑部にでも聞いてみるといいよ」
"それと怖がらせてごめんね。じゃあね、左近…"とすまなそうに笑いながら軽く手を振ると鬼結さんは音もなく部屋から消えた。
突然現れた挙げ句、言いたい事だけ言って消えた鬼結さんにただ呆然とするしかなかった。
※左近が去った後の部屋
(っ、んっ…はぁ)
(くっ…も、もう十分だろう!)
(あぁ…久し振りだったから、つい)
(そもそも怪我はするなとあれだけ…うっ)
(ちょ、顔色わっる。貧血?)
(だ、誰のせいだとっ…!!)
(もちろん、あたしのせいかな?)
(少しは、加減をしろ!)
(ていうか、左近に見られてたみたい)
(っ!?なん、だと!?)
(刑部の仕業でしょ。ちょっと行ってくる)
(お、おい!私を置いていくな!!)
(貧血が少し落ち着いてから動きなよ)
(違う!私はそんな言葉は望んでいない!!)
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