06*空に恋した向日葵(1/4)
「なまえちゃん!一緒に移動教室に行っ…」
「ごめん。ちょっと職員室に用があるから」
「あ、ちょ…なまえちゃん!待って!」
あたしを引き止めようと芥川くんが手を伸ばして来たが、それを軽く往なして避けると逃げる様に教室から出た。
そして廊下を小走りで進んで行く。
"「忠告って?」"
"「芥川さんのファンは、芥川さんのやる事を邪魔しません。ですが、芥川さん飽きた後は別です」"
"「?飽きた後って?」
"「言い方が悪いですが、芥川さんが要らないと思った者はファンにも要らないんですよ」"
"「あぁ…つまり、芥川くんがあたしに飽きたら…ファンの子があたしになんかするって事?」"
"「えぇ、簡単に言えばそういう事です」"
あの日、日吉くんが忠告としてあたしに話してくれたのは芥川くんのファンクラブについてだった。
その結果、どうやらファンクラブというのはあたしが思っていた以上に恐ろしい集団だったらしい。
その中でも特に芥川くんのファンクラブは、色々と無法地帯らしい。というのも、芥川くんがファンクラブに全く干渉していないからだそうだ。
ちなみに学園1の有名人でファンが1番多いと思われる跡部くんのファンクラブは、跡部くんがきちんと統率を取っているらしく、ある意味1番まともらしいです。いや、あたしからしたら全然まともじゃないけど。
"「えっ…じゃあ、…」"
"「みょうじ先輩は芥川さんが飽きるまでの我慢とか思ってたんでしょうけど、むしろ飽きられた方が危ないんですよ」"
"「そ、そんな事言われても…どうしたらいいかわからないよ」"
"「まだ間もないですし、みょうじ先輩が芥川さんを避ければいいかと。あの人、誰もが自分のいうことを聞いてくれると思ってる節があるので」"
"「避けるって…」"
"「別に無視をしろと言ってる訳じゃないですよ。ただ、用があるからとか言って、なるべく一緒に行動をしない様にすればいいだけです」"
正直、本当にそんな事だけで芥川くんがあたしに構うのをやめてくれるか不安だったが…日吉くんが嘘を付くとも思えなくて、素直に頷いた。
そして今、実際に芥川くんを置いて教室から逃げて来た訳だけど…ちょっとドキドキしてる。というか、ちょっと怖い。
ついでに忍足くんの言葉は信用しない方がいいと助言もいただいた。やっぱり忍足くんは、ただ面白がっていただけなんだと確信した。
・・・でも引き止めようとしていた芥川くんの手をあたしが避けた時の顔を見た時は胸が痛んだ。
やっぱり、あの芥川くんの顔は苦手だ。
prev|
next