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キミの為に (1/4)


あの後、何度か車を乗り換えて仁王先輩や柳先輩も一緒に切原くん家に向かい、そのまま彼女という事で紹介されてしまい…困惑しながらも切原くんの家族に挨拶をした。

でも、正直色々と申し訳なくて謝る事しか出来なかった。

というのも、やっぱりすぐに切原くんについて調べられてしまったらしく…切原くんの家に、記者が続々と集まって来てしまったからだ。



「あぁ!もうっ!ゆっくり話も出来ないじゃない!」

「最初からこうなる事はわかっていたでしょう?」

「そうだけどさぁ。でも、まぁ…なまえちゃんの為に一肌脱いであげる」

「こっちもオッケーぜよ」
「はいはい、お姉さんも頑張りますよ〜」
「赤也のお姉さんは、こっちへ」

「じゃあ俺等は玄関からで、参謀達は裏口から行くナリ」

「あぁ、任せろ。撒いたら連絡しよう」



鳴り止まない、インターフォンと電話に切原くんのお姉さんがイライラしながら立ち上がるとあたしと同じ髪色のウィッグを被るとその上からニット帽を被りゆっくりとあたしに向かって笑った。

そしてよく見れば、仁王先輩と柳先輩が切原くんに変装してて…仁王先輩のお姉さんも切原くんのお姉さんと同様にあたしと同じ髪色のウィッグとニット帽を被っていた。

そこでやっと意味がわかり、思わず仁王先輩の腕を掴むと安心しんしゃい。とあたしの頭をぽんぽんと撫でるとこれはお前さん用じゃとなんの特徴もない茶髪のウィッグを渡すと玄関に向かって行ってしまった。



「赤也達は、あっちよ!記者が減ったらすぐに車に乗って逃げるのよ!」

「えっ…あ、あのっ!」

「大丈夫大丈夫!こっちは、おばさんに任せときなさい!」

「みょうじとマネージャーさん、こっちだぜ!」

「あっ、うわっ!切原くんっ…」



そしていつの間にか靴を持っている切原くんに手を引かれて廊下を走って行くと、同時に外から騒がしい音が聞こえて来て仁王先輩達が外に出たのだと確信した。

その音を確認した切原くんが金髪のウィッグを被ると近くの部屋に入り、カーテンの閉まったままの窓の前に立つと隙間から切原くんが外の様子を伺うと部屋の中まで記者が仁王先輩達を追い掛ける声が聞こえて来て、思わず切原くんの手を握る力を強めてしまった。

そんなあたしに切原くんは、大丈夫だから心配するな!といつもの笑顔をあたしに向けるとそろそろ靴履いとけと靴を渡してくれた。

そして暫くして、切原くんのお母さんの声が聞こえて来て…それが合図だったのかカーテンと窓を一気に開けると、そのまま手を引かれて車まで走った。


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