出逢いは暗闇の中で (1/4)
今日も部活が終わり、いざ帰ろうとしたら運悪く雨が降り出した。しかもいつもならロッカーに入っているはずの折り畳み傘がなく、ならば教室のロッカーにあるだろうと思い…先輩達には先に帰ってもらい教室に取りに向かった。
そして結局、お目当ての折り畳み傘は教室のロッカーにもなく…前にクラスのヤツに貸したままな事を思い出し舌打ちをした。
仕方なく雨に打たれて帰るしかないと覚悟を決めて下駄箱から走ると不意に雨音とは違う水音がしてピタリと足を止めた。
微かに雨音に混じり違う水音に頭を傾げる。雨に打たれながら、ゆっくりと歩きながら不自然な水音の出所を見付ける。
そして着いたのは、真っ暗な室内プール。確か、ここは水泳部専用の…室内プールだったはずだが、詳しくは知らないが水泳部は部員数の関係で廃部になったという噂だ。
それに明かりも付いていない。ならば、この水音はなんなんだ?これは、まさか…とゆっくりと室内プールへのドアに手を掛けるとドアはあっさりと開いた。
びしょ濡れの靴を脱いで男女別に別れている更衣室をゆっくりと抜けて、遂にプールに続くドアを開けた。
そしてそこで目にしたのは、月明かりに照されたプールで何者かが泳いでいる光景だった。
ゆっくりとプールに近付くとそいつは、俺に気付いたのかスーッと泳いでこちらに向かって来た。
そしてバサッと水面から現れたそいつは、俺を見るなり目を見開くとクスクスと笑った。
「なんだぁ、日吉くんかぁ。ビックリしちゃった」
「…お前、何をしてる」
「え?何って泳いでるんだよ」
そう言いながら水泳キャップを取るこいつを俺は、知っている。話した事はほとんどないが、俺と同じクラスのみょうじなまえだ。
男女共に友達が多いが無駄に騒いだりしないヤツだ。
そんな事を考えているとみょうじがちょいちょいと手招きをして来たのでその場にスポーツバッグを置いてからゆっくりとしゃがむとそのまま腕を引かれた。
その結果、俺は見事にプールに落ちた。
「っ…なんの真似だ」
「ははっ、だって日吉くんびしょ濡れだったし。ならプールに入っても同じかなって」
「だからって…急に腕を引かなくてもいいだろうが」
「ごめんごめん。それにこれで日吉くんも共犯に出来るし」
「お前…無断でこのプールを使ってるのか?」
「無断…ではないかな?あたし、水泳部だからね」
そう言いながら、笑うみょうじは少しだけ悲しそうな顔をしていた。
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