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そんな早坂にクスクスと笑いながらすまんすまんと謝る忍足さんに更にムスッとして機嫌が悪くなる早坂になまえがまたおろおろし始める。

いや、早坂の気持ちはよくわかる。バカにされてる気分なんだろう。だが、残念ながらこの人はそういう人だ。

相手にするだけ無駄っ…



「先輩、マジで腹立ちますね」

「自分、ホンマに可愛えなぁ。せやけど、そないカッカッしてもええ事ないで?」

「カッカッさせてるの誰ですかね?殴られたいんですか?眼鏡割りますよ?」

「忍足さん、俺以上に殴られそうな雰囲気になって来たんでもう帰ったらどうです」

「ははっ、そら怖いわぁ。せやけど、別にバカにした訳ちゃうで?今時、珍しく真っ直ぐな子やなぁって思っただけやで」



いや、相手にするだけ無駄もなにも…早坂に関しては媚びを売らないを通り越して…もはや喧嘩を売ってるんだが大丈夫なのか?まぁ、運動部の早坂からしたらテニス部は教師からも特別視されてていい気はしないんだろうが。

だが、そんなのはお構いなしに早坂の元に歩み寄る忍足さんに頭を抱える。

この人…たまに本気でよくわからない時があるが、今がまさにその時だ。

しかも早坂も負けずに忍足さんを睨んでてもはや、頭が痛くなってきた。むしろ、もう俺は教室に戻っていいのか。



「自分、名前は?」

「人に名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀じゃないんですか?」

「それもそうやな。俺は、忍足侑士」

「知ってますけど?」

「そりゃそうや。んで、自分の名前は?」

「言いたくないです」

「早坂…ともだちちゃんやっけ?みょうじさん、合っとる?」

「えっ、あっはい」



最高に嫌な顔をする早坂とおおきになんて言いながら笑う忍足さんが対称的過ぎて、もはや状況がよくわからない。

そして俺は、教室に戻りたい。忍足さんに関わるとロクな事がないからな。しかし、なまえをこのまま置いていくのも心配だ。

・・・・・。

とりあえず、あの2人を置いて俺達は教室に戻ろう。事実、俺達には関係ないからな。

小さく手招きをしてなまえを呼び、教室に戻ろうと言うと少しだけ考える素振りを見せたがすぐにコクりと頷いた。

そして2人で廊下を歩きながら教室に向かった。



「なんだか忍足さん、嬉しそうだったね」

「早坂は最高に機嫌が悪そうだったがな。それにしても今更だが、置いて来てよかったのか?」

「大丈夫大丈夫。実はともだち、忍足さんの事を密かに格好いいとか言ってたから」

「・・・早坂もなかなか性格に難がある奴だな」

「気になる人程、突き放したくなっちゃうんだって。嫌な部分を最初に見せちゃうみたいな」

「あいつも素直過ぎか」



まぁ、完全に忍足さんは早坂を気に入ったみたいだから問題なさそうだが…いや、なんか嫌な予感がするから今は何も考えないで置こう。


※その一ヶ月後、早坂と忍足が付き合う事になりこの時の日吉の嫌な予感が当たるのはもう少し先のお話。





(あ、あれ!?なまえがいないし!)
(さっき日吉と教室に戻ったで?)
(なら私も戻るんで!)
(まぁ、そう言わんでもう少し話そうや)
(嫌です!)
(なら教室に送ってくで?)
(それも結構です!!)
(ははっ、自分ホンマ可愛えなぁ)
(意味がわからないんですけど!)
(緊張しとるん?俺と2人ってわかった途端目泳いどるで)
(っ、う、うるさいです!!)
お わ り

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