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その後、なんだかんだで俺はテニス部の先輩に、なまえは水泳部の先輩に絡まれ…まともに2人で話をする事が出来なかった。

まぁ、それでもそれなりに話せたから特に気にしないが。それに帰りはどっちにしろ一緒に帰るつもりだったからな。

送りの車の手配をしている跡部さんに俺とみょうじは、歩いて帰ると伝えるとフッと笑うとお互いに疲れてるだろうからいつも以上に気を付けて帰れと言われた。

確かに、疲れていないと言ったら嘘になるが…そこまで疲れていなっ…なるほど、跡部さんが言っていたのはなまえの事だったのか。

軽く跡部さんの視線を追うとそこには、椅子に座ったままこくりこくりと軽く船を漕いでいるなまえがいた。


いくら、水泳部のエースで泳ぐのが好きだと言っても大会が終わったすぐ後でさすがに疲れていない訳がない。俺でさえ、慣れてきたと言ってもプール練の後はかなり疲れるからな。

とりあえず、軽く跡部さんに頭を下げてからなまえの元に向かうとこくりこくりと船を漕いでいたなまえがゆっくりと顔を上げて少し驚いた。



「…ん、日吉くんだぁ」

「眠いのか?」

「ん、ちょっとだけ」

「跡部さんに送って貰うか?」

「んーん、いい。日吉くんと帰る」

「あの距離を歩いて帰れるのか?」

「うん、大丈夫」



どうして俺だと気付いたのかわからないが…ふにゃりと笑いながら俺を見上げるなまえは、どう見ても眠そうだ。むしろ、眠過ぎてキャラがふわふわしてる様に感じる。

…その不意打ちに普通に可愛いとか思ってしまったのは秘密だが。

ゆっくりと立ち上がるなまえに手を貸しつつ、一緒に帰りたいと言うなまえと歩いて帰る事にした。まぁ、途中までは跡部さん家の車で送って貰うんだが。


そしてその車の中でなまえは、俺に寄り掛かりながら目を瞑ってしまった。やはり、かなり疲れているんだろう。それにこのどんちゃん騒ぎにも慣れてない上に先輩達にもかなり気も遣ったに違いない。



「ふふふ、みょうじさん寝ちゃったの?」

「えぇ、かなり疲れてたみたいで。本当は歩いて帰るって言ってたんですが、このまま送って貰おうかと思ってます」

「でもみょうじさんは、日吉と一緒に帰りたかったんじゃないかな。確かに、起こすの可哀想だけど」

「それはそうかも知れないですけど」

「一応、声掛けてからにしてあげたら?何か言いたい事があるのかもしれないよ。ちゃんと2人で話せなかっただろうしね」

「…そうします」



そう言いながら、俺等と帰る方向が同じの滝さんがクスクスと俺となまえに視線を向けながら小さく笑った。

相変わらず、掴み所のない人だがやっぱり部員の中で一番まともなだけあって下手に詮索したりしないでフォローしてくれて助かる。人間観察が趣味だと言っていたが、流石というかなんというか。


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