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急に腕を掴まれたから驚いたのか、俺に腕を掴まれたから驚いたのかはわからないが一瞬目を見開くとみょうじは、すぐに俺から目を反らした。

それがまた俺を苛立たせた。



「…他校にまで媚を売りに来たのか」

「なっ……」

「普通に考えて男しかいないところにそんな格好で来るなんてそういう事だろ」

「…違う。あたし、そんなつもりじゃ…」

「不快だ」

「……っ、ごめんなさい…あたし戻るね」



俺の言葉に瞳を揺らすとバッと腕を振り払うと逃げる様に走って行くみょうじに胸が痛かった。

また傷付けたと思いつつ、みょうじをすぐに追い掛けられないのは川谷さんに胸ぐらを掴まれているからだ。

だが、すぐに瀬戸さんが落ち着けと川谷さんを俺から引き離してくれた。



「お前っ…みょうじをここに連れて来んのにどんだけ苦労したと思ってんだよ!」

「ちょ、かわやん落ち着けって!確かに日吉の言い方もわりぃけど…」

「おかしいと思ったぜ!ずっとテニス部に迷惑掛けたくないからあたしは行きませんって…そう言ってた理由がよくわかった!お前だな日吉!みょうじを傷付けたの!」

「…まぁ、さっきの会話聞く限りそうだろうね。ていうか、気分転換にって思って連れて来たのに最悪じゃん」



瀬戸さんに羽交い締めされてる川谷さんが今にも泣き出しそうな顔で俺を睨むと、その間に入るように海野さんが溜め息混じりに俺を見た。

そしてそんな今の状態にまるで付いて行けないと言わんばかりの顔をしている先輩達に更に居心地が悪くなる。

だが誰もが黙ってる中、跡部部長がどういう事だと海野さんに詰め寄るとハァ…と大きな溜め息を吐きながらチラリと俺を見るとゆっくりと口を開いた。



「夏休み入るちょっと前からみょうじが絶不調なんだよ。タイムもボロボロだし。最近はヤケクソになって泳いでて全然楽しそうじゃない」

「…さっき遅れて来たのもギリギリまで泳いでたからだし。俺等にもタイムが戻らないって謝ってばっかりでよ」

「だから、みょうじが少しでも元気になれるかなって思って無理矢理でも連れて来たのに!」

「日吉がなんで急にみょうじにそんな態度取るようになったのか知らないけど、みょうじはお前が思ってる様な奴じゃないし。それに水泳部では休憩の時はあの格好がデフォだし、俺等は先に上がってたからハーパン穿く余裕あったけどみょうじはギリギリまで泳いでたし、何より今のみょうじにそこまで考える余裕なかったと思うし」



冷たい表情で淡々と話す海野さんにズキリと胸が痛む。

あぁ…クソッ!


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