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そしてなんとも言えない気分のまま、プールに向かうといつも通りみょうじは1人で気持ち良さそうに泳いでいた。

大会への出場が決まったから、先輩達も一緒に残ってるかと思ったがそんな事はなかった。まぁ、今日からテニス部も活動時間が伸びたからかもしれないが。



「みょうじ」

「あ、日吉くん。部活お疲れ様」

「あぁ、みょうじもな」

「今日は随分と遅かったけど居残り?」

「聞いてないのか?俺等も大会に向けて活動時間が伸びたんだよ」

「へぇ、そうだったんだ。あたしももう上がるから」

「今日は早いな」

「久し振りに先輩達とタイム計ったりして盛り上がってたら、ちょっと疲れちゃって」



そう言いながら笑うみょうじは、ゆっくりとプールから上がると足早にシャワーを浴びに向かったので、俺は玄関に向かった。

さすがに自由に泳ぐのと部活動としてタイムやらを計ったりするのは違うのか。

でもまぁ、大会の出場が決まった事でかなりテンションが上がっていたみたいだから、張り切りすぎたんだろう。


そして暫くして着替えを終えたみょうじが更衣室から出て来た。



「お待たせ。じゃあ帰ろっか」

「今日はヤケに素直だな」

「ははっ、そうかな?それに元々、日吉くんと帰るの嫌いじゃなかったから」



ならなんでいつも送られるのを嫌がってたんだと言いたいが、なんだかんだでみょうじは俺を気遣ってただけで一緒に帰る事を嫌がってた訳じゃないのなら別にいい。

それにしても教室だと人目を気にしているのか全く話し掛けて来ないんだが、プール練の時や一緒に帰ってる時はそれなりに話す事が増えた気がする。

まぁ、だからといって元からみょうじは騒がしいタイプではない上に忍び込んでいた時もそれなりに会話はしていたから全然嫌ではないがな。

そんな事を考えながら隣を歩くみょうじを見ると俺の視線に気付いたのかゆっくりとこっちを向くと軽く頭を傾げた。



「ん、どうしたの?」

「…………」

「…?っ、…日吉くん?」

「思わせ振りな態度はよくないんじゃなかったのか?」

「それは日吉くんでしょ」

「さっきの言葉もそうだが、今も手を振り払ったりしないお前も十分思わせ振りな気がするが」



俺の言葉にみょうじが一瞬目を見開き、さすがに手を振り払われると思ったがピタリと足を止めるとうつ向いた。

みょうじがモテるとわかった後で、こんな態度を他の奴等にもしてると思ったらイラついた。

それにしてもクラス内での様子を知っていて、みょうじが思わせ振りな態度や男子に媚を売る様なヤツじゃないのはわかってたはずなのに、俺は何をしているんだ。

完全に俺の八つ当たりだ。



「…そう思わせたならごめん。じゃあね」



振り払うとまではいかないが、ゆっくりと俺の手を解くと逃げるように走り去っていった。

どう見ても走るのが遅くて、追えばすぐに追い付けるのに何故か俺は、みょうじを追い掛ける事が出来なかった。




※ともだちに帰宅報告の電話中
(帰ったよ)
(おかえり!久し振りの部活どうだった?)
(うん、楽しかったよ)
(…?なんか元気なくない?)
(ちょっと疲れただけだよ)
(いやいや、疲れただけのテンションじゃない!)
(それどんなテンションなの…)
(マジでなんかあったの?)
(まぁ、ちょっとね)
(わかった!日吉だな!遂に告られたか!)
(いや、話飛び過ぎだよ)
(でも原因は日吉なんだな?)
(え、あぁ〜まぁそんな感じ)

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