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…ほ、本当に元気じゃな。
海で散々遊んだ後、風呂やら夕飯やらを済ませて…ゆっくり過ごせるかと思ったら、海で一緒に遊んだ女子達からまさかの花火への誘いじゃ。
正直、ゆっくりしたかった俺は心の中で幸村に断ってくれと念を送ったが…その思いも空しく、幸村は考える素振りもなく笑顔で頷いていた。
「随分とテンションが低いけど、無理に誘った訳じゃないんだから部屋で休んでればよかったのに」
「…俺だけ参加しないのはおかしいじゃろ」
「気にし過ぎじゃないのか?楽しめないのなら無理をする必要はないと思うが」
「でもまぁ、仁王だけ来ないってなったらみょうじさんが気にする可能性はあったかもね」
「それなら、俺等がみょうじを部屋に送り込めばいい話だったがな。そっちの方がゆっくり話せるだろうしな」
キャッキャッと女子達と花火をしながらはしゃいでいるブンちゃん達を遠目に、線香花火を静かにやっていると幸村と参謀がスッと隣に座ると一緒に線香花火に火を点ける。
それにしても、幸村が言ったように強制ではない訳じゃし、ましてやみょうじに名指しされて誘われた訳でもないのに…なんで来たんじゃろうな。
チラリとみょうじの方を見れば、ジャッカルが火を点けた置き花火にはしゃいどる。
「ふふっ、やっぱりみょうじさんが気になったんでしょ?」
「…ニヤニヤしなさんな」
「だって、仁王ってば分かりやすいんだもん。まさに、疲れてるけど好きな子がいるなら…みたいな感じじゃん」
「主にその好きな子に振り回されて疲れ果ててるがな」
「ははっ、それは確かに」
「はぁ…いつから俺はそんな単純なヤツになったんじゃろうか」
「えっ、元から仁王は単純じゃない?」
「確かにな。ひねくれてる様で実は単純だな」
そんな事を言うのは、幸村と参謀くらいじゃ。いや、柳生辺りもいいそうじゃな。
それにしても、自分でも驚く程にみょうじに振り回されちょるし、更にそれを嫌だ思えないのが本当に不思議じゃ。まさに惚れた弱味ってヤツなんじゃろうか。
正直、慣れない事ばかりで戸惑う事は多いし…疲れるのは事実じゃ。だが、それ以上にみょうじと関われる事が嬉しいと思う。
前の俺なら絶対に海で遊んだりせんし、花火に誘われても参加しなかったじゃろう。じゃが、みょうじがいるってだけで、こうも違う。本当に凄まじい影響力ぜよ。
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