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「わーい! ありがとー、におーくん!」
「これ、暴れるんじゃなか」
「ひゃー! 浮き輪に乗ってるのって案外こわいんだね!」
「そうか? なら普通に浮き輪に入ってもいいぜよ?」
「だけど、これ大きいサイズの浮き輪だから中に入っても乗っても、わたしすっぽ抜けそう!」
「それは、まぁ…否定出来んが」
どうにかみょうじを説得して帰りは、俺が泳ぐ事に出来たんじゃが…どう見ても浮き輪のサイズが合ってない。女子の中でも小柄なみょうじには、スペースが余り過ぎてスカスカじゃ。確かに、ここまでサイズが合ってないといくら泳げると言っても、怖そうではあるな。
じゃが、今更俺がまた浮き輪を使うのもちょっと違うナリ。
仕方なくみょうじには我慢して貰うしかないと、ゆっくりと浮き輪を押し始めたんじゃが…
「ねぇ、におーくんも浮き輪に入って来て!」
「…へっ?」
「背中合わせで浮き輪に入れば隙間もないし、バランスも取れるよ!わたしは後ろでぐだ〜ってしてるから!」
「えっ…いや、流石にそれは」
「大丈夫大丈夫〜!」
「ぶっ…ちょ、みょうじっ…」
「ん…あれ? におーくん痩せてるから、そんなに隙間埋まらなかった!」
まさかの提案に困惑している俺を無視して、浮き輪を軽く浮かせて俺を中に入れると不思議そうな顔をして笑った。
…いや、笑い事じゃないが。
浮き輪の中でへへっ〜と笑いながら俺を見上げるみょうじは、何故か御満悦そうである。
普通に距離も近いし、色々と困っちょる俺は固まっている。嫌ではないが、決して嫌ではないが! 俺としては、むしろ嬉しいぐらいなんじゃが! この状態で俺にどうしろと!?
「ん? もしかして、におーくん前がいい?」
「い、いやっ…」
「なら行こう! ごーごー!」
「っ、や、やっぱり後ろで」
「えっ、わかった! じゃあ、わたしが泳ぐからにおーくんはぐだ〜ってしててね!」
「ち、違うナリ…そうじゃなくてっ…いや、もうなんでもよか…」
さっきは、背中合わせって言っちょったのに何故か普通に背中にくっつくみょうじに、俺は色々と更に困った。
そして後ろは後ろで、ちょくちょくみょうじが振り替えるし…みょうじが泳ぐ事になっちゃうしで…俺は混乱していた。
その結果、みょうじは前で脚を俺が後ろで泳ぐ事になったんじゃけど…それもそれで、色々と辛いんじゃが。
そもそも、みょうじが全然嫌がらないのも不思議じゃし。ちゅーか、普通に覆い被さる様にぴったりくっついてるのにキャッキャッと嬉しそうなのが本当にわからない…。
実は、俺は男として見られてない説。
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