09*(3/4)
なんか、無駄に疲れたナリ。
「おい仁王、邪魔だろぃ」
「ふふ、疲れきってるね」
「荷物を置いたらロビーに集合だ! 早くしろ!」
「真田は元気だな」
「こう見えて、弦一郎が一番旅行を楽しみにしていたからな」
部屋に着くなり、荷物と共に倒れ込む俺を邪魔だと足蹴にするブンちゃんに反撃する元気すらない。
朝からみょうじと話せた上にバスではずっと隣で、しまいには手まで繋いだんじゃ。一気に色々な事が起き過ぎて、嬉しいやら恥ずかしいやらで…本気で疲れたぜよ。
じゃが、荷物を置いたからにはロビーに行かなきゃならん訳で…重たい体を引き摺る様にしてロビーへと向かった。
…騒がしい生徒達に教師が声を荒げて必死な姿が見えて、遠巻きに壁に寄り掛かりその様子をボーッと眺める。
どうせ、海に行く組と出掛ける組とホテル内で休む組の説明をしてるだけじゃろうし。もちろん、俺はホテル内で休む組じゃ。こんな暑い日に海になんか行ったら死んでしまう。
「あ、におーくん!」
「お、おぉ…みょうじ。どうしたんじゃ?」
「幸村くん達に誘われて、これから海で遊ぶんだけど、におーくんは? 幸村くんに聞いて来てって言われたんだけど」
「……な、なるほど?」
「わたしの友達もいるから大人数になるけど、どうかな?」
…おいこら、幸村。
俺が暑いの苦手なのを知っててわざとやったじゃろ。しかも、よりにもよってみょうじに頼むとは汚い。さすが幸村汚い。俺が断れない事を知っててやってるじゃろ。
そして先程までの眠そうな顔とはうって代わり、にこにこと俺を見上げているみょうじに行きたくないとは言えず、行く事を伝えるとパァッとみょうじが明るくなる。
く、くぅっ…可愛いのぅ。
「じゃあ、30分後にロビーに集合ね! 待ってるからね!!」
「お、おう…」
「幸村くーん! におーくんも一緒に遊ぶってー!」
「ははは、そっか。わかったよ」
「じゃあ、わたし達は準備してくるねー!!」
相当、海が楽しみなのかにこにこと集合時間を俺に伝えると、幸村の元へ戻って行った。
とは言っても、テンションが高いせいか全部丸聞こえなんじゃがな。
おいこら、幸村もブンちゃんも笑ってるんじゃなか。
そしてみょうじ達と別れた幸村達が笑いながら、俺の元へやって来て "暑いの大の苦手なのにね" と俺の肩を叩いた。
…知っててみょうじを寄越した癖によく言うナリ。
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