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そして、次々と袋から中身を出していく。
柳生には、"次は柳生くんもみたいです"の文章が書かれた高級ティッシュ。多分、眼鏡拭きに使って的な感じだろうと俺は解釈した。
ジャッカルには、"四つの肺ってなんですか?"の文章と書かれたエナジードリンク。多分、周りの連中が言ってた事を真に受けたんだろう。
ブンちゃんには、"あかい人"とだけ書かれたミントガムだった。悪いが笑った。幸村と一緒に爆笑した。多分、ガムのイメージしかなかったんじゃろうな。
幸村には、"コートが綺麗なお花畑に見えたよ"という文章と可愛らしい花の形をした箱に小さなチョコが入っていた。なんか、特別感を感じてちょっと嫉妬した。
そして、俺宛の物なんじゃが…
「へぇ、なんか凄い以外な物でビックリ」
「でも文章は、一番のいいッスよね! 俺もそれがよかったッス!」
「いや、お前勝っただろぃ」
「これは期待に応えなきゃですね、仁王くん」
「うむ、予定を組めばどうにでもなるからな」
赤いヘアゴムが入った小さな袋に書かれた文章に思わず笑みが溢れた。
"仁王くんへ 次は勝った仁王くんがみたいです"
つまり、またテニスの試合を観る気があるって事なんじゃな。それに"次は勝ってね"とかじゃないんか。ていうか、勝った俺が見たいってなんじゃ。"仁王くんが勝つとこ"じゃないんか?
「なんつーか、仁王先輩とみょうじさんって付き合ってる訳じゃないんスよね?」
「いや、この文章でわかるだろぃ」
「えぇ? でもなんか、仁王先輩が勝つ様に応援してるってよりは信じてるからね〜みたいな感じで、なんつーか…こう…信頼してるっつーか」
「まぁ、確かに普通なら"次は勝ってね"とかだよな」
「ふふふ、たまに赤也って鋭いよね」
「ふっ、丸井や仁王よりみょうじをわかっているな」
「???」
赤也の言葉にクスクスと笑いながら頭を撫でる幸村に、何がなんだかの赤也は不思議そうに目をぱちくりとさせた。
つまりは、赤也が言った事は強ち間違いじゃないということなんか。
どうにも、みょうじの言葉の意図を汲み取るのが難しい。というか、たまに圧縮言語的な感じでよくわからん時がある。
「いや、マジで意味わかんねぇんだけど…つまり、どういう意味な訳?」
「うむ。簡単に言えば、この文章は必要最低限の言葉で済ませているだけなので、こちらが意図を汲み取る必要がある」
「俺の場合、多分だけどいつもと違って見えて凄かったよ〜みたいな感じかな?」
・・・なるほど、わからん。
さすがにみょうじとは、会話を交わす事は増えたが…まだそこまでいっちょらん。
まぁ、ブンちゃんへの言葉はないので"意図も糞もないじゃねぇか!"とか文句を言ってるが、まぁそれは仕方ないナリ。
解読(?)中
(多分、俺のも"みんなが心配するからこれで手当てしてね"みたいな感じで)
(ハハッ、赤也ってば本当に凄いね)
(柳先輩のは"いっぱいノート使うと思うからこれも使ってね"みたいな)
(うむ、そんなところだな)
(柳生先輩のは…えーと、言いにくいっす!!)
(ん?なんでですか?)
(あ、そこまでわかってるの?あはは、赤也凄いね!)
(多分、"次は柳生くんが試合に出て勝ってね。だから泣かないで"だな)
(・・・お恥ずかしい)
(なるほど、だからティッシュか)
(いや、圧縮され過ぎじゃね?)
(みょうじさんだからね)
(みょうじだからな)
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