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今日も図書委員の当番で、みょうじ先輩も来ると言っていたから少しだけ楽しみにしていた。

そして職員室に不足していた集計表と貸し出し表を取りに行ってから図書室に向かうと既にみょうじ先輩は来ているらしく、いつもの席に鞄が置いてあった。

だが、なかなかみょうじ先輩が戻って来ない。鞄を置いたままだし、教師にでも捕まってるのかと思っていたら…凄い勢いで図書室のドアが開いた。

そしてそこには、図書室には無縁であろう人物がいた。



「いた!日吉!!」

「なんですか、浅香さん。というか、今は誰もいないからいいですけど…普通に声がでかいです」

「なまえのこの姿を見てもそんな事言える!?なんか拭くものない!?」

「…お、大袈裟な」

「大袈裟じゃないっての!そもそも着替えないんでしょ!?風邪引くわ!バカ!!」



相変わらず、騒がしい人だなぁ…と思いつつカウンターの中から会話をしていたが、浅香さんの背後から現れたみょうじ先輩の姿に思わず目を見開く。

全身ずぶ濡れ?
微かに制服から滴っている雫がその濡れ具合を物語っている。

とりあえず、状況がわからないが…ずぶ濡れのみょうじ先輩をそのままにしておく訳にはいかないので準備室にあるスポバからタオルを持って来た。



「あ、ありがとう」

「やっぱり日吉なら持ってると思った!てか、準備室貸してくんない!?」

「い、いやいや…本は湿気に弱いし。軽く拭いたら帰るからいいよ」

「いや、よくないですよ。とりあえず、そこにいても目立ちますから中に入って下さい」

「えっ…あ、ごめん」

「なっ…体冷えてるじゃないですか!早く着替えるなりしないと本当に風邪引きますよ!?」



すまなそうにタオルを受け取ったみょうじ先輩の手が思った以上に冷たくて、思わず声を荒げてしまった。

そもそも、自分の心配より本の心配ってどういう事なんだ。

しかもさっきの2人の口振り的にまともに拭く物どころか、着替えも持ってないみたいだし。

そして2人を準備室に入れてからスポバを漁るが…今日、体育で使ったジャージしかない。さすがに俺が着た物を渡す訳にも…



「日吉!それでいいからなまえに貸してやってくんない!?」

「なっ…ちかっ!ていうか、人のカバンの中身見ないで下さいよ!」

「緊急事態なんだから仕方ないでしょ!!」

「でもこれ、今日の授業で俺が着た物なんですよ」

「大丈夫大丈夫!多少汗臭くてもびしょ濡れよりマシ!はい、じゃあなまえはこれに着替えなよ!日吉は私と部屋から出てるから!」



俺の言葉を無視するかの様に俺のジャージをみょうじ先輩に渡すと、そのまま俺の背中を押しながら準備室を出た。

相変わらず、強引というか…人の話を聞かない人だな。


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