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さすがに誤解をされたままなのは、嫌だな。それに日吉くんは、図書委員だし…図書室を利用するあたしとしても日吉くんと気まずくなるのは困る。
「あ、あのね…別にあたしから話し掛けたりとかした訳じゃなくてね?」
「そんなの知ってますよ。中庭で寝てた芥川さんに膝掛けを掛けたんでしょう?」
「え、なんで知ってるの?」
「部活に芥川さんがみょうじ先輩の膝掛けを持って来たんで。正直、最初は見間違えかと思ったんですけどね」
「えぇ…部活にまで…」
「というか、これでも人を見る目はあるんで。別に、俺はみょうじ先輩が芥川さんに取り入ったとか思ってないですから」
そして相変わらず、眉間に皺が凄い寄ってるけど冷静な日吉くんである。
それに、それもそうだ。
あたしなんかが芥川くんに取り入るとか無理だし。見た目的にも性格的にも普通に無理だ。
しかも日吉くんと初めて話した時も正直テニス部ってだけで凄く怖くて、話し掛けないでよ…的な事を言った気がするし。まぁ、その時に日吉くんに俺にはファンクラブなんかないって言われたんだけど。
「それで、大丈夫なんですか?」
「え?なにが?」
「なにがって…ファンの奴等になんかされたりとか。芥川さんのファンは、色々と問題ありますし」
「いや、特には…って、ん?問題?」
「芥川さんのファンの奴等は、表向きは穏健派ですけど中身はかなり過激な奴等ばっかりですよ」
「え?でも芥川くんのファンは過激じゃないって言われたけど」
「誰にです?」
「忍足くんだけど」
あたしの言葉に更に日吉くんの眉間に皺が寄った。
そして、大きな溜め息を吐きながらゆっくりとカウンターから出て来る日吉くんにちょっとだけ後退る。
だけど、そんなの関係ないと言わんばかりに距離を詰めてくる日吉くんにわりと本気で怖いと思った。
「そんなに怖がらないで下さいよ。別に何もしませんし」
「い、いや…日吉くんの顔めちゃくちゃ怖いけど」
「それに関しては、気分が悪いので仕方ないです」
「え、あたしに怒ってるの?」
「いえ、怒ってませんよ。ただ少し、みょうじ先輩は素直過ぎるので忠告をと思って」
そう言いながら、薄く笑う日吉くんはあたしの腕を引くとほら座って下さいと椅子を引いてくれた。
いや、あたしはそろそろ帰ろうかなって言ってたと思うんだけどなぁ…でも別に用がある訳じゃないし、忠告ってのも気になるし…結局、あたしは日吉くんに言われた通りゆっくりと椅子に座った。
部活の休憩中
(おい、忍足)
(ん?宍戸、どないしたん?)
(みょうじ…大丈夫なんだろうな)
(またその話かいな。今のところ大丈夫やて)
(だけどよ、ジローのやつ)
(今更、俺等が何言うても無駄やろ?)
(みょうじは、ともだちの友達なんだよ)
(知っとるよ。俺かて止めてやりで?)
(嘘付け。テメェは、楽しんでるだろぉが)
(せやかて、みょうじオモロイねんもん)
(お前…本当に性格わりぃな)
(せやな。自分でも良いとは思うてへんよ)
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