05*(3/4)
・・・うーん。
今日は、なんだか集中出来ないなぁ。
お昼にともだちから色々と芥川くんや忍足くんの話を聞いたせいか、いつもの様に図書室で読書をしていたんだけど…集中出来ないでいる。
そして今日はもう帰ろうと、開いていた小説を閉じて携帯で時間を確認しながらゆっくりと立ち上がった。
「今日は、もう帰るんですか?」
「えっ?」
「いつも遅くまでいるじゃないですか」
不意に声を掛けられて、パッと声がした方を向くとそこには大量の本を抱えた見慣れた子がいた。
「ひ、日吉くん…」
「お久し振りです。それで今日は、帰るんですか?今、新作を持って来たところだったんですけどね」
「えっ…うん。帰ろうかなって…」
「そうですか。先輩が好きそうな小説があったんですけど、残念ですね」
そんな事を言いながら抱えていた本をカウンターの上に置いて、カウンターの中に入って行ったのは図書委員の日吉くんだ。
氷帝では、放課後に余り図書室を利用する人がいないので図書委員の人に覚えられてるらしい。その中でも日吉くんは、何故かあたしに話し掛けて来てくれる子だった。
もちろん、日吉くんがテニス部なのは知っているけど不思議と日吉くんと話すのは怖くなかった。というのも、日吉くんは2年生でファンクラブも日吉くんが否定しているらしくいないという噂だからだ。
まぁ、実際…日吉くんのファンクラブはあるんだろうけど。
「そういえば、みょうじ先輩が芥川さんに気に入られてるって噂を聞いたんですが、本当なんですか?」
「えっ、あぁ…うん?多分」
「多分ってなんですか。それにテニス部の先輩達と関わるのは怖いって言ってませんでしたっけ?」
「うん、今でも普通に怖いよ」
「なら、なんで芥川さんに気に入られてるんですか?しかもよりによって芥川さんって」
珍しく饒舌な日吉くんに驚く。更にカウンター越しにあたしを見つめる日吉くんの眉間に皺が寄っていて、なんだか怒っている様な顔をしていてちょっと怖い。
あたしがテニス部とは関わりたくないって言ってたのに、芥川くんに気に入られてるって事が嫌なのかな。日吉くんは、ファンクラブとかが嫌いみたいだし…実は、あたしが関わりたくないって嘘を付いてたとか思っているのかもしれない。
そういえば、跡部くん家に連れて行かれた日に何故か日吉くんはいなかったし…やっぱり、あたしから芥川くんに近付いたと思われているのかもしれない。
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