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そしてプールに着くなり中からワーワーと騒がしい声が聞こえて、跡部部長が頭を傾げながら更衣室を抜けてドアを開けるとそこには荷物整理をしているはずの水泳部の部員と思われる人達が泳いでいた。
「うわー、先輩のクロール相変わらず速い。でもあたしの方が速いんでまだまだですね」
「うっさい!俺は平泳ぎ専門なんだよ!」
「みょうじの泳ぎは、相変わらず綺麗だよな!あぁ…マジで大会出してやりたかったぁぁあぁ!」
「いえ、あたしは大会より先輩達とですね…」
「夏の大会の個人戦ならまだ出場出来たのに、廃部じゃなぁ」
「あたしは個人より先輩達と団体に出たかったんですー。去年の団体戦とか…もうヤバかったですし!」
いつもと違う明るいプールで楽しそうに泳いでいるみょうじになんだか凄く違和感を感じた。それに水泳部に執着していない様に感じてただけで、みょうじは水泳部が好きだったみたいだ。
そんな事を思っていると跡部部長がツカツカと未だに俺等に気付いていない水泳部の部員達に近付いていく。
それはそうだ。
荷物整理をしていると思っていた連中がプールで泳いでいたのだから。
「おい、テメェ等!俺様は荷物整理は頼むとは言ったが、泳いでいいとは言ってねぇぞ」
「げっ…跡部」
「別に今日付けで廃部なんだから、まだこのプールは水泳部のだと思うんだけど?」
「最後くらい見逃してくれよ。荷物整理は、ちゃんとやるし」
「フンッ…勝手にしろ。俺等は少しプール内を見させてもらうぞ」
「おう。まぁ、なんもねぇけどな」
多少驚いた様子だったが、跡部部長の言葉に安心したように笑うとみょうじの背中を叩いて、また4人は泳ぎだした。
俺がいる事に気付いたみょうじが軽く笑った気がしたが、何故か凄く複雑な気持ちになった。
そして跡部部長の後ろを付いていきながらプール内を見て回ったが、俺は正直ここには何度も来ているので見て回る必要はなかった。
「なぁ、跡部?ホンマに水泳部廃部になったん?あいつ等めっちゃ速いやん」
「アーン?あいつ等は実力はある奴等だ。だが、部員5人以上いない時点で部活として認められねぇからな」
「あの女の子も水泳部なんだろ?なんつーか、後1人足らねぇだけで廃部とか可哀想だな」
「…跡部部長、いいですか」
「アーン?なんだ」
「水泳部をテニス部の傘下に所属させる事は出来ないんですか?」
「…ほぅ?お前にしては珍しい意見だな。理由を聞かせてみろ」
楽しそうに笑って嬉しそうに泳いでいるみょうじを見ていたから、このままみょうじの居場所を奪うのは余りにも酷いと思った俺は気付いたら跡部部長にそんな事を言っていた。
※プール内(水泳部)
(相変わらず、偉そうでムカつく)
(いや、偉いんじゃないですか?)
(まぁ、生徒会長だしな)
(みょうじもああいうのタイプ?)
(キャー!跡部様ーとかいう感じ?)
(え、興味ないです)
(ひでぇ!あいつモテるのに!)
(いえ、顔はカッコいいと思いますよ?)
(あ、でも思うんだ。なんかショック)
(なんでですか。でも性格知らないんで)
(まさに俺様だよ俺様!)
(自己中な人は、ちょっと…)
(自己中!相変わらずみょうじはバッサリいくな)
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