03*(4/4)
そして授業が終わり、案の定と言うか…予想通りと言うか、芥川くんが凄い勢いであたしのところへ向かってくる。
しかも手にはしっかりとあたしの膝掛けが握られている。
「ねぇねぇ、なまえちゃん!」
「…な、なんでしょうか」
「アカン、さっきの勢いどこ行ったんや。あんなん絶対言えへんやん」
「忍足くん…うるさい」
「今日1日でいいからなまえちゃんの膝掛け貸してくれる?明日はちゃんと持ってくるC〜」
「…あ、うん。別にいいけど」
「えへへ、ありがとだC〜!」
うっ…なんていい笑顔。
嬉しそうにあたしの膝掛けを抱き抱える芥川くんにもう話し掛けないでと関わらないでと言いたいのに言えない。
いつも寝てるだけだったからまともに話したことないし、むしろ起きてる顔を見たのが今日が初めてかも知れない。
そんな事を考えているとあたしが急に黙ったのが気になったのか芥川くんがどうしたの〜?と前屈みになりながらあたしの顔を覗き込んできて慌てて大丈夫と手を振ると芥川くんが頭を傾げながら離れた。
「ん〜どうかしたの〜?」
「い、いや…えと…」
「みょうじ、全然ダメやん。ちゅーか、ジローのペースにまんまとハマっとるやん」
「なになに〜?あ、なまえちゃん次の移動教室、一緒に座ろ〜?」
「え、えぇ〜…」
「…え、ダメ〜?」
「い、いや…ダメって訳じゃ…」
「えへへ〜じゃあ行こー!」
「え、うわっ…ちょ、芥川くん」
そしてなんだかんだで芥川くんに強く言えないあたしは、忍足くんが言う通り、芥川くんのペースにまんまとハマってしまい、手を引かれて移動教室へ向かう事となった。
しかし、周りからの視線が痛すぎて自然と下を向いて歩いていると忍足くんに転ぶで?なんて頭をポンポンとされてもう泣きたい。
周りからは、悲鳴みたいな声は聞こえるし。あからさまにあたしへの敵意溢れる言葉も聞こえてきて、生きた気がしなかった。
なのに芥川くんの手を振りほどけないのは、芥川くんのあの笑顔のせいに違いない。
「なまえちゃんはここだC〜!」
「ほな、俺はこっちに座るわ」
「え、ちょ…これはさすがに…」
「なんや?ジローはよくて俺はダメとか言わんやろ?」
「うっ…ダメじゃないけど、やめて欲しいなぁ〜って」
「ほな、隣座るわ」
もうやだ。本当に忍足くんを嫌いになりそうだ。芥川くんは、あたしの許可なしに隣に座る気満々だったみたいだからわかるけど、なんで忍足くんまで…。
しかし、そんなあたしの思いを知ってか知らずかなんの躊躇もなくあたしに寄り掛かり寝始める芥川くんにもう言葉が出なかった。
(なんちゅー顔してんねん)
(……………)
(無視はアカンやろ)
(なんでこんな事になったんだろう…)
(それを俺に聞くんかい)
(だって元は忍足くんが席変わったから)
(いや、みょうじが膝掛け掛けたからやろ)
(…あっ)
(まぁ、なんかあれば言うてや)
(…怖いからいいよ)
(今更やん。どうせ、呼び出しされんで?)
(……………)
(せやから、なんかあったら言うんやで)
prev|next