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そしてその日は、特になにもなく無事に学校が終わった。友達には、少し羨ましいと言われたが…正直、あたしからしたら怖くて仕方がない。
ファンクラブが存在する人の隣の席とか怖すぎる。だけど、あたしの席はここなので仕方ない。
なるべく、隣を見ないように静かに席について今日も窓の外を眺める。
「おはようさん」
「お、おはよう…忍足くん」
「なんや元気ないな。具合でも悪いん?」
「あ、ううん…大丈夫」
「なら、ええけど」
しかし挨拶くらいは、さすがにしなくちゃ失礼だ。ゆっくりと隣に座る忍足くんに軽く頭を下げると柔らかい笑みを返される。
しかし忍足くんの隣の芥川くんは、おはようどころか夢の中である。いや、別にあたしには関係ないんだけど…。
そしてまたゆっくりと視線を窓の外に移し、いつもの様に授業を軽く聞き流しながら過ごした。
「あ、いたいた!侑士ーっ!」
「ん、なんや岳人か。どないしたん?」
「現文の教科書忘れちまってよ〜貸してくれ!」
「…またかいな。せやけど、今日は生憎持ってないねん」
「ゲッ…マジかよ!ジローは持ってねぇだろうし…跡部には借りたくねぇし」
「滝と宍戸には聞いたんか?」
急に聞こえた声にビクリと肩が跳ねた。そしてキャーキャーと騒がしい教室内。どうやら、テニス部の人が来たらしい。
確認したいが、そっちを向くのが怖いので判断しようがないが…忍足くんが岳人と呼んでいるので多分、向日くんだと思う。
どうやら、現代文の教科書を忘れたらしく忍足くんに借りに来たようだが、生憎持ってなかったらしい。ドンマイだ。
と言うか、忍足くんって置き勉してないんだ。真面目だ。
「なぁ、お前現文の教科書持ってねぇの?」
「…わっ、え、あ、あたし?」
「お前以外に誰がいんだよ?で、現文持ってねぇの?」
「え、…も、持ってるけど…」
「おぉ!マジかよ!貸してくれ!」
「ほな、俺からも頼むわ。岳人に貸してやってくれへん?」
「う、うん…どうぞ」
肩を掴まれたかと思ったら目の前には、奇抜な髪型の向日くんがいた。しかも、教科書を貸してくれとの申し出。
さすがにあるのにないと嘘付いて、バレたら困るので素直に貸すことにした。席が隣だと普通に教科書を持ってた事に気付かれそうだしね。
サンキュ!と元気よくあたしの教科書を受け取ると向日くんは、去って行った。
そしてあたしは、置き勉していた事を後悔したのであった。
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