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そして車に乗って暫く移動して、着いたのは事務所が用意してくれたあたし専用のマンションだった。いつもは、使ってないんだけど…使う時が来るとは思わなかった。
しかも、そこにあたしと切原くんを降ろすと槙野さんは、落ち着くまで部屋から出ちゃダメだからねと念を押すとすぐに車でどこかへ行ってしまった。
とりあえず、みんなが必死に自分を逃がしてくれたのを無駄にする訳にはいかないのですぐに切原くんと一緒に部屋へと入った。
「な、なにもないけど…多分、ここには記者の人達は来ないと思うから」
「おん、マネージャーさんから聞いてる。つーか、大丈夫か?」
「えっ?」
「・・・顔色わりぃ。てか、よく考えたら退院してすぐだもんな…無理させてわりぃ」
「あたしなら大丈夫だよ。むしろ、切原くんや切原くんの家族…先輩達が心配だよ」
「とりあえず、大体は計画通りだから安心しろって。だから、んな顔すんなよ」
そう言いながら、ぽんぽんとあたしの頭を撫でる切原くんに精一杯の笑顔を向けるが…その瞬間、切原くんが困った様に眉が下がった。
きっとあたしは、上手く笑えてなかったんだと思う。
あたしのせいでこんな騒ぎになっちゃったのに、あたしは何もしないでこんなところで身を隠してて…本当に情けなくて、申し訳なくて心苦しい。
「あぁっ…もう、んな顔すんなよ。なんの為にここまでしてんのかわかんなくなるだろ」
「でも…」
「でもじゃねぇの!それに俺がみんなに頼んで動いて貰ってんだから、みょうじはなんも悪くねぇし」
「う、うん…」
「むしろ、みょうじは巻き込まれた側だろ?俺が勝手に動いたんだからよ」
「そ、そんな事ないよ!ただ、嫌にならないのかな…って」
さすがに今日程ではないにしても、あたしと一緒にいるだけで好奇の目で見られる事が増えるだろうし。
やっぱりやめとけばよかったとか思われたりしたらどうしようとか色々と考えてしまう。
切原くんが嫌だと言えば、あたしは引き下がる事は出来るけど…周りの人達はそんな事は関係なしに切原くんに好奇の目を向け続ける事になるし。
「まぁ…よくわかんねぇけど、お前って本当に自分の心配しねぇよな」
「…あたしは、どうにでもなるし」
「俺だって別にどうにでもなるし。てか、俺は目立つの好きだし?そ、それに?今はみょうじといれればなんでもいいっつーか…」
「・・・・」
「か、顔赤くすんなよ!本当の事なんだからよ」
「…切原くん、ありがとう」
「お、おう!だからんな顔してねぇで笑えって」
やっぱり、あたしは切原くんが好きだ。
ほら笑え笑えとあたしの頭をぐりぐりと撫でながら、照れ臭そうに笑う切原くんが温かくてもう一度ありがとうと言いながら、笑った。
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