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そして依然、状況が読めてないあたしに隣に座っていた切原くんがバツが悪そうに頭を掻きながらあたしの方を向いた。
「あぁ…なんつーか、別に難しく考えなくていいかんな。俺が勝手に言っただけだしよ」
「え…な、なにが?」
「ククッ…ダメじゃな。かなり混乱しとるみたいぜよ」
「まぁ、無理もない。あの状況であんな事を言われれば混乱もするだろう」
「っ、だから俺がお前を好きだって話!聞いてなかったのかよ!?」
「ふふっ、若いっていいわね」
「本当ねぇ〜羨ましいわぁ」
確かに、さっきも切原くんはあたしを好きだと記者の人達に言ってたけど、
・・・・・。
そこでやっと切原くんの言っている意味がわかって、少し不機嫌そうな切原くんの顔をみた瞬間…カァッと顔が熱くなるのがわかり、思わず顔を反らしてしまった。
えっ…で、でも…いや、切原くんの好きだってのは多分違う意味で…あ、あれ?でも熱愛報道はこっちが本当だとか言ってた様な…え、あぅっ…なんかよくわからなくなって来た。
「す、好きって…違う意味だよね?」
「はぁ!?」
「アハハッ、あの直球の告白を違う意味って…もう姉さんお腹痛いわ!」
「姉貴は、笑い過ぎじゃろ」
「ふむ、仕方がない。みょうじ、赤也は好きな女の為にと親に頭を下げてまでここに来た。ここまで言えば、お前ならわかるな?」
「あっ、ちょ…柳先輩!それは言わない約束だったじゃないッスか!」
・・・・え?
親御さんに頭を下げてまであたしを迎えに来たって…あたしは、切原くんからそんな事は聞いてない。ただ、嫌じゃなかったら迎えに行くって…そう言ってたのに。
じゃあ、最初から記者の前に出て来るのも元からそういうつもりだったって事?
名前は、言ってなくてもあんだけ堂々と切原くんは顔を出したんだ。きっと、すぐに名前も自宅も調べられてしまう。
・・・それがわかってて切原くんは、あたしの為にそこまでしてくれたんだ。
「っ、…切原くんって…本当に無謀だよ」
「な、なんで泣くんだよ!?」
「あたしなんかの為に…」
「なんかとか言うな。つーか、俺はお前だから無謀だろうがなんだろうがここに来たんだよ!」
「っ、うん…ありがとう」
「ま、まぁ…だからあんま気にすんな。俺がお前の隣を堂々と歩きたいってだけだしよ」
ヒュー言うのぅなんて言いながら笑っている仁王先輩に切原くんがうっさいッスよ!と顔を赤くしながら怒っている姿にグッと涙を拭って、ゆっくりと切原くんの腕を触れた。
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