君の覚悟 (1/4)


切原くん達がお見舞いに来て数日後、槙野さんが少し眉を下げながらあたしに雑誌を持って来てくれた。

そこには、Ryoさんがあたしのお見舞いに来た事と一緒に切原くん達がお見舞いに来た事が大々的に取り上げられていた。


"Ryo病院に駆け込む!"
"熱愛について意味深な笑顔"
"謎の訪問者!"
"まさかの二股!?"
"お相手はモデル関係者か"


ゆっくりと雑誌を閉じて槙野さんを見ると大丈夫よ…と言わんばかりに小さく微笑んだ。



「明日、切原くん達が迎えに来てくれてるそうよ」

「槙野さんっ…やっぱりあたし…」

「社長も言ってたでしょ?うちは、別に恋愛禁止でもなんでもないって。それに仮にナマエとしての仕事が減ってもやる気があれば辞めさせないって」

「でもっ…」

「ほら、遅くなっちゃったけど新しい携帯。ちゃんとバックアップもしてあるから…自分で切原くんに言いなさい」

「・・・・・」

「私は、人の目を気にした顔じゃなくて…年相応にころころ表情を変えるなまえが好きよ」



じゃあまた明日迎えに来るからね。と優しく笑うと槙野さんは、ゆっくりと病室から出ていった。

・・・・・。

そして槙野さんが置いていった新しい携帯を手に取り、電話帳を開いて意を決して画面に触れた。

そして…数回のコール音で電話は繋がった。



「"もしもし!みょうじか!?"」

「あっ…うん。今、大丈夫?」

「"やっと携帯復活したんだな!今、マネージャーさんに電話しようとしてたんだよ!"」

「えっ…槙野さんに?どうかしたの?」

「"俺が明日迎えに行くっての聞いたか?"」

「う、うん…。あのね、その事なんだけど…」

「"俺、明日は変装して行かねぇからな"」

「えっ…!?」



まさかの切原くんの言葉に目を見開く。

迎えに来てくれるのは、正直嬉しいし…あたしも、もう来ないでとは言うつもりはなかった。むしろ、迎えに来てくれるって事にお礼を言おうとしたのに…変装をしないで来るなんて…なんでそんな無謀な事をする必要があるんだろうか。

もしかして…あたしを車で待つ事になるから、そこまで気にしてないのかな?でも念には念で…変装はしといた方がいいと思う。



「"俺は、ただの切原赤也としてお前を迎えに行く。だから、変装しねぇ"」

「えっ…どういう意味?」

「"ん〜、俺なりの覚悟っつーの?まぁ、みょうじはいつも通りでいいから気にすんな"」

「う、うん…」

「"なぁ、俺が迎えに行っていいんだよな?"」

「…うん。嬉しいよ、ありがとう」

「"お、おう!ならいいんだけどよ!"」



そして今日は、早く寝ろよ!と言われて素直にうんと頷くとまた朝に連絡すると言って切原くんは電話を切った。


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