(2/4)


そして何度か取り直しをしたものの…無事に一番の難所だったシーンの撮影が終わって、少しだけ休憩を貰いやっと座る事が出来た。

と、言ってもまだ撮影は残ってるから本当に少しだけの休憩だから、部屋に戻ったりは出来ない。

それでも携帯をチェックするには十分な時間を貰ったので、槙野さんから携帯を受け取って湖の近くまで移動した。

この湖での撮影は、今日が最後だったのでもう来る事はないだろうなぁ…なんて思いながら携帯を確認すると、切原くんからトークが入っていて思わず笑みが溢れた。

どうやら、朝練で先輩達にシゴられたみたいでマジで鬼!と愚痴を溢していた。

そんな切原くんに今少しだけ休憩で湖の近くにいるんだ。と打ち込み湖の写真を撮って添付するとすぐに既読が付いた。


"すげぇ!泳げんの?"
[さすがに泳げないよ]
"マジで?勿体ねぇ!最近暑いじゃん"
"泳ぎてぇ!"
[山の中だから結構寒いよ]
"さみぃの?"
[結構、肌寒いよ。だから水も冷たいと思う]
"マジか。風邪引くなよ"
[ありがと。でも入らないから大丈夫だよ]
"まぁ、だよな"
"つか、今日も夜電話出来んの?"


相変わらず、切原くんは元気みたいで嬉しくて自然と頬が緩んだ。それに撮影もそろそろ終盤で、撮影時間も短いから…今日はいつもより長く電話が出来そうかな。



「おーい、ナマエちゃん?」

「えっ…あ、Ryoさん…」

「ずっと呼んでたのに全然気付いてくれないんだもんなぁ〜」

「す、すみません…」



不意に目の前でブンブンと手を振られて、切原くんに返事を打ち込んでいたのをやめてパッと顔を上げると機嫌が悪そうなRyoさんがあたしを見ていた。

まさか、切原くんとのトークに夢中になっていてRyoさんに気付かないなんて…。

そんな事を思いながら、Ryoさんに軽く頭を下げるとRyoさんがニコリと笑ってあたしの手からサッと携帯を取った。



「携帯ばっかり相手にしてないで、少し俺と話そうよ」

「…っ、か、返して下さいっ!」

「あっ、ちょ!」



その行動に思わず、Ryoさんに飛び付くように携帯を取り返そうとした。

だけど、それが悪かったのか…驚いたRyoさんの手からスルリと携帯が滑り落ちて地面にバウンドするとそのまま湖に落ちるのがわかり、咄嗟に湖に手を伸ばした。

だけど、体制が悪かったのか…勢いを殺し切れずにそのまま携帯と一緒にあたしは、湖に落ちてしまった。


prev|next

[戻る]