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その後、無事にあたしの分の撮影が終わり槙野さんと一緒に用意された部屋に戻ったんだけど…

暫くして、撮影が終わったのか本当にRyoさんが部屋にまで来た。ニコニコと笑顔を浮かべながら早くおいで?と言わんばかりのRyoさんに思わず槙野さんに助けを求める様に視線を送った。



「…えと、Ryoくん?ナマエなんだけど、初日で疲れてるみたいだから…今日はゆっくり休ませてあげたいんだけど」

「嫌だなぁ、少し話すだけですって」

「でも昼間は出掛けるとか言ってなかったかしら?」

「ハハッ、さすがに疲れてるって言われたら連れ回さないですよ。それとも僕と2人っきりにさせるのが嫌なんですか?」

「…っ、お話くらいなら大丈夫ですよ」



相変わらず、笑顔は絶やさないのにどこか高圧的なRyoさんにこのままだと槙野さんの印象が悪くなってしまいそうで咄嗟に槙野さんとRyoさんの間に割って入った。

正直、Ryoさんと2人っきりになるのは怖いから避けたいのが素直な気持ちだ。

だけど、あたしがRyoさんの申し出に応じないと今後の撮影に影響が出そうだし…Ryoさんの態度を見る限り引き下がる気もないみたいなので、あたしが折れた。

そしてあたしの言葉を聞くなり、じゃあ行こっかとあたしの腕を掴むRyoさんに槙野さんが心配そうな顔をしていたが、大丈夫という意味を込めて頑張って笑った。


◆◇◆◇◆


Ryoさんに腕を引かれて連れて来られたのは、メイン撮影現場の洋館の近くだった。



「ん〜、この辺なら静かに話せるかな」

「…はい」

「そんなに構えなくていいよ?俺は、ナマエちゃんと少しでも仲良くなりたいだけだから」

「はい」

「俺と話すの嫌?」

「…いえ、そんな事はないです」

「まぁ、ほぼ初対面だったから仕方ないよね。でもさ、撮影とはいえ1週間も一緒にいる訳だし仲良くしたいんだよね」



月明かりに照らされながら、そう言いながら薄く笑うRyoさんに何故か言い知れぬ恐怖を感じて何も言う事が出来なかった。

ほぼ初対面の男性と2人っきりだから怖いと言うのはもちろんだけど、Ryoさんの距離感が怖い。

ずっと気にはなっていたんだけど…何故かやたらと距離が近いのだ。さすがに離れて下さいとは言えないので、されるがままなんだけど…それでも出来る事なら離れたい。そう思うくらいに距離が近くて、必死に冷静を装いながら早く帰りたいと思いつつもRyoさんに付き合った。





※部屋に戻って電話中
(…お、起きてたんだ?)
(夜に連絡するって言ったんみょうじだろ)
(ご、ごめんね…)
(別に怒ってねぇし)
(でも不機嫌そうだから)
(普通になんかあったんかと思った)
(うん、ごめんね…)
(まぁ、忙しかったんだろ?)
(う、うん…)
(なら別にいいっつーの。時間ある時でいい)
(ん、ありがとう)
(おう。ま、あんま無理すんなよ!)

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