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そしてほんの数十分だけだったけど切原くんと会話が出来て、ずっと張り詰めてた気分が和らいだ気がした。

また夜に時間があれば電話をすると約束してから電話を切った。

そしてまだ時間はあったけど待機場に戻ると不機嫌そうに携帯を弄っているRyoさんと困った様に近くに立っているRyoさんのマネージャーと槙野さんがいた。



「な、なにかあったんですか?」

「あ、ナマエちゃん。随分と遅かったけど、もしかして彼氏?」

「…え?」

「電話してたんでしょ?凄い嬉しそうな顔してるし。彼氏?」

「い、いえ…違います。友人です」

「ふーん…まぁ、いいや。あのさ、今日の撮影が終わったらちょっと出掛けない?」

「え?」

「あ、でも俺はまだ結構な量残ってるからさ。終わったら迎えに行くからナマエちゃんは撮影終わったら部屋にいてね」



そう言いながらニコリと笑って去っていくRyoさんの目が笑ってなくて呆然と立ち尽くしてしまった。

そんなあたしに槙野さんが心配そうに顔を覗き込んで来て、ハッと我に返った。

・・・Ryoさんが怖い。
そう素直に思った。



「…RyoくんにもRyoくんのマネージャーにもナマエは、事務所的に余り親しく関わるのはNGだって言っといたはずなんだけど…大丈夫?」

「・・・は、はい」

「それにしても、ナマエはどこって聞かれて、ちょっと席を外してるとしか言ってないのに…電話してたって知ってたのも気になるわ」

「え?槙野さんが言ったんじゃないんですか?」

「まさか。わざわざ電話をしに行きましたなんて言わないわよ。もしかして、ナマエが電話をしているところを見て…私にわざと聞いたのかしら…」

「ど、どういう事ですか?」



意味深な槙野さんの言葉に思わず眉間に皺が寄ってしまう。

まず、あたしが電話をしていたのを見てたとして…それを槙野さんに聞く理由がわからない。それに撮影が終わったらって…返事もしてないのに強引過ぎるんじゃないかな。

そしてあたし以上に眉間に皺を寄せながら、何かを考え込んでいる槙野さんにどうしようかと考えていると監督から呼ばれてしまって、急いで槙野さんと監督の元に向かった。



「はい、なんでしょうか?」

「次に撮影するシーンの事なんだけどね。もう少し絡みを入れたいんだけど大丈夫かね?」

「指示を出していただければ、それは大丈夫ですけど…」

「いやぁ…Ryoくんにね、もう少し恋人同士さを出した方がラストシーンの切なさと感動が引き立つって言われてね。それもそうかと思ってさ。それにしてもRyoくんの熱意には驚かされるよ」



そう言いながらハハハッと機嫌良さげに笑う監督に何も言えず、ただ愛想笑いを返す事しか出来なかった。

本来なら撮影中に色々とシーン変更が行われるのは、よくある事だし…気にしたらキリがないんだけど…今回は不思議とそう割り切れる気がしなかった。


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