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撮影は、順調だ。

だけど、空き時間の度にあたしの元に訪れるRyoさんに気が気じゃない。

元からあたしは、友好的な女優じゃないと言われていた。それでもあたしに話し掛けて来る人はいたけど、余りにもあたしの反応がつまらないのか結局すぐにあたしに構わなくなる人ばっかりだったのに…Ryoさんは違った。

事務的なあたしの返答にも嫌な顔もせずに話し掛けて来て、さすがの槙野さんもあたしを心配しだした。



「槙野さん…あの、次の空き時間…電話がしたいんですけど…」

「…そうね。Ryoくんには、私が適当に言っておくから早く行きなさい。でも何かあっても困るからなるべく近くでする様にしてね」

「あ、ありがとうございます!」

「ずっと携帯を気にしてたみたいだし、いいわよ。それにさすがにずっと事務的な会話をしてても息が詰まるでしょ」



ほら、早く行かないと捕まるわよと笑う槙野さんに軽く頭を下げてから小走りで近くの林に向かい、木の影に隠れる様にして携帯を画面に触れた。

ずっと撮影と空き時間をRyoさんといたせいで、携帯をチェック出来なくてずっとライトが点滅してるのが気になっていた。

そして携帯の画面をタップしていくと、最近使い始めたトークアプリに見慣れた名前と共にストレートな短文がいくつも並んでいて思わず笑ってしまった。


"ヒマ"
"撮影どんなん?"
"英語の課題忘れた!やべぇ"
"昼食った?"
"忙しそうだな"
"時間出来たら返事"
"くり"
"くれだった"
"こえききてー"
"いまのなし"
"やっぱききてー"


最後の3つの言葉に少し驚きつつ、自分も切原くんのあの元気な声が聞きたいと思ってしまった。けれど、時間を見る限りまだ授業中だったので通話はやめてとりあえず簡潔に返事を送った。

そして仁王先輩と柳先輩からも撮影は、順調か?と切原くん程ではないけどトークが入っていたのでそれ返信をしていたら急に着信の画面になり、咄嗟に通話画面に触れてしまい急いで携帯を耳に当てた。



「も、もしもし?切原くん?」

「お、おう…今、時間大丈夫か?」

「うん。今は、空き時間だから大丈夫だよ」

「なんつーか、まだ1日も経ってねぇのにみょうじがいねぇってだけでなんかつまんねぇんだけど!」

「ふふ、学校でもあんまり話す機会なかったじゃない。トークはよくしてたけど」

「いやいや、話せなくてもいつも教室にいた奴がいねぇのってやっぱりつまんねぇぜ?」



本当なら授業中のはずなんだけど…余りにも嬉しそうに話す切原くんに何も言えないどころかあたしまで嬉しくなってしまった。

それにしても切原くんが言うようにまだ撮影1日目なのにあたしもいつもクラスの中心で楽しそうな切原くんの声を聞いていたせいか、凄く久し振りに感じた。

それに休日も時間が合えば切原くんが電話をしてくれていたけど、声を聞かない日もあったはずなのに、今日はヤケに切原くんの声が聞きたいと思ってしまった。


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