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…ど、どうしよう。
帽子も眼鏡もしてちゃんと変装してから切原くんの試合を観に来たのに…ラケットを振る切原くんが余りにもかっこよくて興奮して帽子を取ったのが運の尽きだ。
帽子を取った結果、服装もドラマの撮影後でそのままだったせいであっさりと女優のナマエだとバレてしまった。
そして深く帽子を被りながら必死に走って逃げて来たのは、いいけど…ここは知らない学校でいつ誰に見付かるかわからなくて建物影に座り込み必死に身を隠した。
切原くんに助けを求めたいのはやまやまなんだけど…切原くんは、さっきまで試合をしてたから…無理だ。
それに学校の近くで待機してるマネージャーを呼ぶにしろ…ここがどこだかわからないし。
…本当にどうしよう。
そんな事を考えているとバタバタと足音が近付いて来て、ギュッと帽子を握りながら膝に顔を埋める様にして息を殺した。
「おーい、みょうじー!!」
「っ!」
「…クソ、どこ行ったんだよ」
「き、切原くんっ…!」
「みょうじ!お前、んなとこにいたのかよ!って、なんで泣いてんだよ!?」
「っ…ご、ごめんなさい…」
「わ、わかった!わかったから泣くな!ちょっとこのジャージ被ってろ。その帽子よりバレねぇだろ」
理由は、わからないけど…切原くんがあたしを探しに来てくれた事が嬉しくて、切原くんの顔を見たら涙が出た。
そんなあたしに焦る素振りを見せながら伊達眼鏡を外すとジャージの袖で軽くあたしの涙を拭うとすぐにジャージを脱いであたしの頭に被せてくれた。
走って探してくれていたのか、ちょっとだけ汗を含んだジャージに更に涙が出そうになってギュッとジャージを握りながら必死に堪えた。
「だ、だから、泣くなって!も、もしかして…ファンの奴等になんかされたのか!?」
「・・・・(首を振る)」
「な、ならなんで泣いてんだよ」
「切原くんが…探しに来てくれて嬉しかったの。でも同時に申し訳なくて…ごめんね」
「んだよ、そんな事かよ。つーか、俺が観に来いって無理言ったんだから気にすんなっつーの!」
そう言いながら、切原くんはジャージを被ったままのあたしの頭をぽんぽんと撫でるとゆっくりとあたしの腕を掴み立ち上がった。
どうしたのかとゆっくりとジャージを捲るとちょっと走るぜ!とニカッといつもの笑顔を向ける切原くんに驚きつつ、コクりと頷くとゆっくり走るけどジャージ被ってるんだから足元はちゃんと見とけよと言うと、あたしの腕を引きながら走り出した。
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