キミの秘密を知る人達 (1/4)


切原くんと数回メールのやり取りをして、部活が終わるまで教室で待ってる事になり読書をしながら時間を潰した。

そして陽が影って来て、そろそろ読書をするのはやめようと本に栞を挟んだ時に廊下から何やら叫んでいる切原くんの声が聞こえて、本をカバンへとしまった。

そしてドンドンと近くなる声と足音に少しだけ怖くなった。だって、切原くんの声以外にあたしの知らない声が聞こえたから。

しかし、そんなあたしの思いと裏腹にガラッと教室のドアが開きジャージ姿の切原くんが現れた。



「待たせてわりぃ!」

「大丈夫。部活お疲れ様」

「おう。んで、更にわりぃ…ちょっと成り行きで先輩も一緒なんだけどよ」

「ピヨッ」

「とりあえず、部室で話すんで構わねぇか?ここだと誰か来てもアレだしよ」



切原くんの申し出にどうしようかと少し困る。チラリと切原くんの後ろであたしをジーっと見ている銀髪の先輩を見るが、イマイチ何を考えているかわからず更に困る。

…なんで切原くんだけじゃないんだろう。でもここで話すのも確かに、誰かが来たりしたら困るし。

と、色々と考えていたら痺れを切られたのか切原くんがとりあえず行くぜ?とあたしの腕を掴み歩き出して振り払う訳にもいかず、コクりと頷いた。

そんなあたしに銀髪の先輩がニヤリと笑った気がして肩がビクリと跳ねた。


―――
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そして、切原くんに腕を引かれて着いたのはさっき言っていた通りテニス部の部室だった。本当に大丈夫なのかと不安になりつつも、今更腕を振り払う勇気もないので切原くんに腕を引かれたまま失礼しますと部室の中に入った。



「うむ、来たか。なに、そんなに構える事はない」

「無理言いなさんな。赤也がまともに説明せんで連れて来たけん、不安なんじゃろ」

「ふっ、それもそうだな。とりあえず、単刀直入に言わせて貰おう」

「・・・・」

「俺等は、お前が今話題の人気女優のナマエだと言う事を知っているのだが」



サラサラの黒髪を揺らしながら糸目の先輩がそう言い放ち、思わず切原くんの方を向くとブンブンと手と顔を振っていた。

あぁ…やっぱり、切原くんは言っちゃったんだ。それはそうだ…言わないでくれる方がおかしい。だって、切原くんが黙ってる義理はないし…。

それでも、やはりどこかで切原くんを信じていたあたしはとても悲しい気持ちになった。

それにその事をわざわざ呼び出して言うなんて…芸能人だからと何か催促されるんだろうか。それとも口止め料でも請求されるのかな。

そんな事を考えていたらいつの間にかうつ向いていて、スカートの裾をギュッと握りながら自分の靴を眺めていた。


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