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顔を上げた女に俺は見覚えがあった。
「えっ、お前…みょうじだよな?」
「…き、切原くん急いでたんじゃないの?あたしは、もう大丈夫だから行っていいよ」
「えっ、あぁ!?やべぇ!でも本とかバラ撒きっぱなしだし…」
「ただ運ぶだけだし、別に急ぎじゃないから行って大丈夫だよ」
「わりぃな…サンキュ!じゃあ俺行くわ!マジでわりぃ!」
うわぁぁ…やべぇ!!すっかり忘れてたけど課題やってすぐに部活に行かなきゃなんなかったんだ!!真田副部長の鉄拳がぁぁあ…!
そして俺は、その場からすぐに立ち上がり落ちていた課題を拾って急いで教室に向かった。
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あぁ、クッソ…いてぇ…。
結局、部活にかなり遅れて行った俺は真田副部長の鉄拳を食らった。いや、まぁ…柳先輩のお蔭でグランド50周とか鬼みたいな罰は受けずに済んだけど。
「俺の予想より10分程遅かったようだが、なにかあったのか?」
「えっ、あぁ…ちょっと」
「ほぅ、参謀の予想が外れるなんて珍しいのぅ。なんじゃ、廊下でも走っとって生徒指導にでも捕まったか?」
「それならまだよかったッスよ〜。危うく大怪我させるところだったんスから」
「…大怪我?あぁ、なるほど。廊下で誰かに激突したのか…それで相手は大丈夫だったのか?お前の事だ、全力疾走していたのだろう?」
さすがにここまで話したなら全部話しちゃえと柳先輩と仁王先輩に事情を説明すると仁王先輩がクツクツと笑いながら俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
この人、絶対にバカにしてる!俺めちゃくちゃ必死だったのに!まぁ、結果的に部活には遅れるし…鉄拳は食らうしで最悪だけど。
そういえば、あいつ…マジでみょうじだったのかな。いや、でも…あの地味なみょうじがあんな可愛い訳ねぇ。
でも、あの眼鏡とおさげは絶対にみょうじだよなぁ…見間違いとかじゃねぇだろうし。
てか、眼鏡なしでなんで俺ってわかったんだ?それに目が悪いなら眼鏡ないのにすぐに気付くはずなのに気付くのも遅かったし。
「柳せんぱ〜い。眼鏡ってどんくらい目悪いと掛けるもんなんすか?」
「それは視力の悪さによるだろう。急にどうした?お前は、そこまで視力は悪くないだろう」
「頭は悪いがのぅ」
「仁王先輩うっさいッス!なんつーか、そいついつも眼鏡掛けてるんスけど…突撃した時に眼鏡飛ばしちまって」
「うむ、それなのにその子はすぐに赤也だと気付いたと」
「しかも眼鏡掛けてねぇの気付いてなかったみたいだったんスよ!だからなんか変っつーか、眼鏡掛けてる意味あんのかなーみたいな」
そして俺の言葉に柳先輩がその生徒の名前は?と聞かれて俺と同じクラスのみょうじってヤツッスけど…と伝えると気になるなら後で調べておいてやると頭を撫でられた。
え、いや、別にちょっと気になっただけなんスけど…。
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