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そして、俺の無事を確認すると懐中電灯を俺に預けて更衣室を出ていった。多分、着替えに戻ったんだろう。

とりあえず、俺は着替えは終わったから更衣室から出て玄関まで来ると懐中電灯を消した。

そして暫くしてみょうじが携帯片手に制服姿で現れた。



「えっ…待ってたの?先に帰っててよかったのに」

「傘がないからな」

「ははっ、勝手に持ってけばよかったのに」

「そんな事するくらいなら最初から雨に打たれてない」

「ははっ、確かに。まぁ、あたしは別に雨に打たれるの嫌いじゃないし。この傘は日吉くんが使って」

「そういう問題じゃないだろ」



どうぞと言わんばかりに青い傘を差し出すみょうじは、暗闇でよくわからないが…多分笑顔だ。しかし俺が傘を受け取らないとわかるとうーん…と唸りだす。

そんなみょうじを無視して靴を履いていると、みょうじもゆっくりと靴を履き始める。

そしてゆっくりと玄関を開けると相変わらず雨が降り続いていた。



「じゃあ日吉くん家まで送って行くよ」

「…普通は逆だろ」

「気にしない気にしない」

「家遠いのか?」

「いや全然、むしろ近いくらい。だから濡れて帰っても大丈夫なんだよ」

「…なら送って行く。その代わり傘は借りるぞ」

「ははっ、別に送らなくても傘くらい貸すのに」



そんな事を言いながら笑っているみょうじは、玄関から出ると慣れた手付きで鍵を締めた。そして別に無理して一緒に帰らなくてもいいよ?と頭を傾げるみょうじを無視して傘を開き、腕を引いて傘の中にみょうじを引き込んだ。

いつもの俺なら絶対にこんな事はしない。むしろ、ファンクラブやなんやらで女子には懲りているし、話す事すら稀だ。だが、暗闇のせいなのかなんなのか不思議とみょうじとは話すのは嫌じゃない。

そんな事を思っているとみょうじが肩が濡れちゃうよ?と傘を持っている手に軽く触れると傘の位置を俺の方に寄せた。



「これだとお前が濡れるだろ」

「別に大丈夫だって」

「…もう少し寄れ」

「いいよ。日吉くんに悪いし」

「は?」

「日吉くん、女の子苦手でしょ?それに変な噂流されても迷惑だろうし」



あぁ、だからさっきから傘は貸すから1人で帰っていいって言ってたのか。そんな事を気にするならプールに引き摺り落とすなよと突っ込みたいが…まぁ、その気持ちは嬉しい。

ここぞとばかりに無駄にくっついたり、可愛い子アピールしてくるヤツとは違って清々しいくらいさっぱりしてる。

そんな事を思っているとバッとみょうじが傘から出るとニコリと笑った。



「その傘、日吉くんにあげる!」

「おい」

「だから風邪引かないでね?じゃあ気を付けて帰ってね」



まさに言いたい事だけ言うとバチャバチャと雨に打たれながら走って行くみょうじを俺は姿が見えなくなるまでそこで眺めていた。


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