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暫くして、風呂から出たみょうじが戻って来て俺を見るといるのを忘れてたのかなんなのか少し驚く様な素振りを見せた。
こいつ、失礼や。
「お前、俺がおるん忘れてたやろ」
「うん」
「素直か」
「ごめんね」
「まぁ、別にええけど。ほな、寝るんやったら帰るで」
「寝るよ」
そう言いながら布団を敷き出すみょうじは、俺に帰れとは言わない。ちゅーか、帰るなら勝手に帰ればええやんけみたいな感じなんやろうな。
ほんで、布団を敷き終わったみょうじがゆっくりとこっちに向かって来たかと思ったら俺の前にゆっくりと座った。
…なんや、急に。
「財前くん」
「なん?」
「ありがとう」
「急になんやねん」
「あたし、嬉しかったんだと思う」
「なにがやねん」
「あたしと一緒にいてくれて、ご飯も一緒に食べてくれて。でもやっぱり財前くんはあたしに関わっちゃだめだと思ったの」
相変わらず、無表情なのにみょうじは珍しく真っ直ぐと俺を見ながらゆっくりと言葉を紡いだ。
それはもう自分と関わらないで欲しいと言ってる様な内容で正直途中から聞きたくなかった。せやけど、みょうじから俺に話をする事なんて今までなかったから黙って最後まで話を聞いた。
ほんで、一通り話終わったのかみょうじが黙る。多分、俺の言葉を待ってるんやと思うけど…なんやねん。嬉しかった言うといて、もう関わらんでっておかしいやろ。
「理由はなんやねん。そない俺とおるの嫌なん?」
「嫌じゃない。でも財前くんがみんなに悪く言われるのは嫌だよ」
「なんやそれ」
「あたしと一緒にいるとやっぱり不幸になるの。財前くんがみんなに悪く言われるのはあたしのせいだから」
「お前…誰になに言われたんや」
「財前くんは優しいから迷惑だって、なにも言わないだけって。それと財前くんまで悪く見られるから近付かないでってお手紙貰ったの」
そういうとゆっくりと立ち上がりカバンの中から手紙を持ってくるとこれだよと差し出した。
それを受け取り中身を見ると呼び出しに来ないから手紙にしただの、俺が迷惑しとるから付きまとうなとかある事ない事が書かれとった。
ちゅーか、今まで呼び出し全部スルーしとったんかい。まぁ、みょうじの事やから自分と関わったらあかんから行かなかったっちゅーか行けなかったんやろうけど。
それとこの手紙書いたヤツ、アホやろ。付きまとってんのどっちか言うと俺やし。みょうじから俺んとこに来た事なんて一度だってないわ。
…ちゅーか、ホンマにウザい。
グシャリと手紙が握り潰してポケットにそれを仕舞って、みょうじを見るといつもの様に無表情で俺を見てた。
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