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そしてあの夜、俺は結局あの後逃げるように公園から去った。なんとなくあいつがなにから逃げて来たのかがわかったからや。

チラリと隣の席でボーッとしているみょうじを見れば、そこまで寒くもないのに厚着や。よう考えたら違和感しかあらへんやんか…こいつの格好。

そない事考えとったらいつの間にかチャイムが鳴って、みょうじがゆっくりと立ち上がりふらふら〜っと教室から出て行った。

席が隣やから気付いたんやけど、あいつはよく授業をサボる。まぁ、重度のサボり癖ある先輩知っとるし、別に気にならへんけどあいつどこでサボってんねん。

俺もそれなりにサボっとるけど、1回もあいつ見掛けた事ないんやけど。


…あぁ、クソ!なんで俺があんなやつ気にせなあかんねん。

ガタッと椅子から立ち上がり、ふらふらと教室から出て行ったみょうじを追った。

ほんで俺が後ろにおるんを気付いてるんか気付いてへんのか、ゆっくりと校舎裏に向かうみょうじは一度も後ろを振り向かへんかった。

ちゅーか、校舎裏とかベタ過ぎやろ。いや、逆に四天宝寺は校舎裏とかでサボるやつおらんわ。サボるなら堂々とサボるアホばっかやし。

そない事を考えとったら、いつの間にかみょうじがペタリと座り込んどってボーッと空を見上げていた。



「おい、みょうじ」

「………なに?」

「っ…!」



空を見上げていたみょうじがゆっくりと顔だけこちらを向いた。その瞬間、思わず目を見開いた。

相変わらず、無表情で虚ろな目をしとるのにその目からはポロポロと涙が溢れていた。

…ゾクリとした。
ただ無表情で泣いとるみょうじが不気味で、思わず俺は目を反らした。

なんやあれ…静かに泣くとかそういう次元やないやんか…ちゅーか、あれ泣いとるって言うんか?



「あたしに何か用?」

「……………」

「あたしと関わると不幸になるよ。だから関わらない方がいい」

「なに言うてんねん」

「本当の事なんだよ」

「援交しとるとか不倫しとるとかって噂がホンマやって言うとるんか?」

「そんなのどうでもいいよ」



みょうじの言葉にゆっくりと顔を上げるとそこには、制服を捲り血の滲む包帯をスルスルと腕から外しとるみょうじがおった。

正直、包帯を外しとる風景には見慣れとる。部長がよう巻いとるし。せやけど、こいつのは部長とは違う。

ほんで、ゆっくりと包帯を外しとる手を止めてみょうじがこっちを向いた。


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