始まりは好奇心 (1/4)
たまたまコンビニの帰りに俺は、そいつを見付けた。
今日の席替えで俺の隣の席になったみょうじなまえ。
1年の時に四天宝寺に転校して来て、そん時からずっと変な噂があるヤツや。実は援交しとるとか不倫しとるとか、成績が良いのも先生と寝たからだとか…とにかく良くない噂ばっかやった。
正直、俺はそんなん興味あらへんし。むしろ、1年の時はクラスも違ったから全く関わりなんかなかった。
せやけど、今日席替えで隣の席になって変な違和感を感じた。隣の席になったからってよろしく言うて挨拶する訳もなく、ただボーッと座っとるあいつはまるで周りを見てへんかった。
んで、そないよくわからんヤツが夜中の公園でブランコに乗っとるんを見付けたらそりゃあ気になるわ。
まぁ、雰囲気的に学校で話し掛けたりすんのメンドイし。いい機会やし、噂が本当なんか聞けるやんとゆっくりとキィーキィーと鈍い音を発てながらブランコを小さく揺らしとるそいつんとこに向かった。
「お前、こんなとこでなにやってんねん?」
「………?」
俺に声を掛けられてゆっくりと振り返るそいつは、俺を見るなりゆっくりと頭を傾げた。
そしてそいつと目が合った瞬間、なんやザワリとした感覚に襲われた。確かに目が合ったはずやのに、まるで俺を認識していない様な…。
…こいつ、あかん。
関わったらヤバいヤツや。
直感でそう判断した俺は、ゆっくりとそいつに背を向けて公園から出ようと歩き出した。
「そっち、そろそろ警察来る時間。こっちから帰った方がいい」
「…は?」
「……………」
…なんやこいつ。
自分から話し掛けといてなんやけど…急になんやねん。ちゅーか、警察が来る時間ってなんやねん。それになんでそないな事をお前が知っとるんや。
ゆっくりと振り返るとそいつは、今俺が出て行こうとした出口とは違う出口を指差しとった。
そして俺がそれを確認したのがわかったのかゆっくりと腕を下ろすとまたブランコを軽く揺らし始めた。
あぁ…もうなんやねん、ホンマに。
ゆらゆらと揺れとるブランコの鎖をガシャンッと掴みそいつを見下すと無表情のままそいつが俺を見上げた。
「お前…なんやねん」
「…なんだろ?」
「なんでこんなとこにおんねん」
「逃げてきたからかな」
「はぁ?逃げて来たって、なにから逃げて来たんや」
「なんだろうね」
そう言いながら無表情のまま俺を見上げるそいつの胸元にチラリと古傷のようなものが見えた気がした。
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