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▼ あいしたい

湿った瞳孔がこちらを捉えて、またゆっくりと隠された。するがままを赦す、という無言の抱擁は本人の知らないところでこちらの背筋をチクチクとさせた。
親指にかかる37℃の熱量は彼女の肺から送り出される。指の腹で塞がれてしまうほど小さな場所から彼女の生きている証拠が漏れだしている。
触れたくなってしまったのはそのせいだ。ひと捻りで潰れてしまうような場所を愚かにも無防備に放置している。他人には決して許さないような場所をいとも容易くさらけ出している。……いや、それの何が悪いというのだろう。むしろ喜ぶべきところではないのか。そう言った反論が飛ぶと言葉でなく感情が反論する。嫉妬だろうか、これは。
強くあろうとし、事実強さを使いこなす彼女の高潔さは鉄製の鎧のように纏われている。そういう彼女の姿は好きだったし、昔から目で追いかけ続けた。
はたと気がついたのは自分と彼女の間にある好意の種類を知ったときで、その時は気に求めなかったことが今になって叫び声を大きくしている。
羨ましい、鎧をまとった彼女と正面から対峙できることが。殺されるかもしれないという恐怖を感じることが出来るのが。もう彼女の剣呑さをこの身に受けることなど無いだろう。
簡単に潰れてしまいそうな口唇の温かさを知る。果たし合いたい、などという爪の先程の願望を含ませていることも知らず、彼女は眠りこけている。

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